第2話 藤井ユイについて。
藤井ユイ。
活動歴は七ヶ月で、当初からゲーム配信をしている。実力は並だがビッグタイトルをプレイしており、その可愛らしい声とできる限りコメントに答える姿勢から多くのリスナーを獲得した。
また、クリスマスに開催された大手事務所によるVTuber限定のカスタムマッチに出場するなど配信者として
ファンからは清楚キャラとして認知され、言葉使いが
……なるほどね。第一印象はサービス精神の溢れる配信者ってとこかな。
ってかクリスマスって先週じゃん!
高校出て配信活動初めてから、昼夜逆転しかけてるし曜日感覚が
でも自分が選んだ道。納得するまで続けたい。
今夜、藤井ユイの配信するし気合い入れてやりますか!
その前にバイト行ってきます。
▽ ▽ ▽
バイトからの帰り道。
今日はいつも以上に冷えたので道路は凍結し、イルミネーションが反射してテーマパークみたいで綺麗だった。
レストランバイトの僕にとってこの時期は
その光景を何時間と
そのうち爆発してしまえ。
でも今日は嬉しいことがあった。
休憩中に届いたダイレクトメール。藤井ユイのファンだと名乗る男性が今夜の配信で思いをぶちまけたいと書いてあった。
もちろん承諾して通話に上がってもらう。
正直この提案は嬉しかった。僕の活動が
でも、僕の配信スタイルは活動歴の長い人の方が良い方向に作用することが多い。
実は何年もこういう活動してました。何とか賞を受賞してました。とかね。
だから藤井みたいに、活動歴が浅くてまだまだこれからって人は情報不足で盛り上がりに欠けるんじゃないかと疑っていた。
実際分かったことは、まとめサイトに書いてあった概要みたいな部分だけだしね。
メッセージの男性はデビュー当時から推してるって言うし、質疑応答って形でやっても――
「え、待って
不意に声をかけられ視線を上げると、男女複数人のグループが信号待ちをしている。
あぁこのグループ知ってますわ……。
「……久しぶり」
やぁ、って感じに手を上げると派手な金髪が同じような仕草を返してくる。
「ひっさしぶりー! 卒業式以来じゃね?」
その金髪とは当時クラスのボスであった高橋だ。
ギャルみたいな話し方をしてたけど、金髪にしたようで更にギャル感が増している。
ルックスが良いからいつも男の取り巻きを連れてたけど、大学行っても変わんないんだな。
「やばっ熱くねこのメンツ! 本城って就職したんだっけ?」
何が熱いのかわかんないけど、この取り巻きって誰だっけ。
てか、まともに話したことないのによく友達くらいの距離で話せるな。
コイツらのコミュ力どうなってんだ。
「うん。あっいや……」
「?」
「ま、まあそんなとこ」
くぅ辛い!
リアルの自分を知る人に、配信してるなんて言えないよ……。
僕は複数人の前で話すのが苦手なんだ。克服したくてレストランバイトしてるけど、オーダー取るのも大変で厨房に回されちゃったし……。
話したい気持ちもあるけど今は……。
「ごめんちょっと急いでて!」
「おっおう。呼び止めて悪かったな」
僕は急ぐようその場を後にした。
……思わず大きい声出しちゃった。ほんとこういう自分が嫌になる。
配信を始めたのは人前に出なきゃ喋れるって自分に言い聞かせるため。成功体験が
でもこれじゃまだまだ。
もっと配信して自信をつけるんだ。
今夜もリスナーを満足させよう!
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