有名人の炎上を擁護する配信をしていたら、VTuberや大手配信者に気に入られそれはもう凄いことになりました。
ろっし
1章 VTuber藤井ユイ
第1話 ほんじょーと申します。
『ほんじょーの配信はあくまでもスタンダードであり、ちゃんとルールを守っていることをお約束します!』
高校在学中に就職活動、受験から逃げるように始めた配信活動。
十九歳になった今でもフリーターしながら「配信者」をやっている。
今は配信者がもたらす影響は大きい。
TV人気が減少する
人によっては落ち目のアイドルとゲームをして互いに多くの同時接続を記録している。インターネットとTVの関係は逆転してしまった。
だから僕みたいに配信活動でやっていけるよう頑張る人が大勢いる。
でも簡単なものじゃない。TV同様、人気が出なければご飯代を稼ぐことすら困難になる。
だからみんな独自のアイディアで自分を売っている。
でも僕は歌が上手いわけでも、ゲームの腕前があるわけでもなかった。
そこで人々が関心を持つ話題を細かく調べ配信で触れることにした。これが好評で他配信者から認知されコラボ出来るようになった。
今はコラボの真っ最中。もちろん底辺同士のコラボ。
「ほんじょーってさ、個人情報さらけ出してるって聞いたけど、どこまで話せるん?」
「年齢、本名、職業……かな」
「えー知りたい!」
「十九歳一般男性。
「ほんじょーって本名なん! ちょっと草やわ。ってかフリーターって職業ちゃうやん」
「ちゅ~ぶさんの個人情報も晒せって言われてるよ」
「いや絶対言わん。特定されて遊ばれるの嫌やもん」
モニター越しに話すのは歌い手系の配信者。顔を出していないから勝手にイケメンとか言われて、いざ顔出したらブサイクってイジられるのも苦痛か。
僕は失うものが少ないから抵抗がないのかも。
「でもほんじょーは良いよな~。半年で同接百人でしょ? 俺は一年かかったのに」
「これでも考えたんすよ。人が気になるものってなんだろうな~って。そのタイミングで有名俳優の不倫で騒ぎになって僕も気になって記事を読んで。そしたら、まったく興味ない人の炎上とか問題行動ってつい調べちゃうな~って」
「だから逆の発想で、炎上したVTuberとか配信者の良い部分を調べ上げて擁護する配信を始めたんや?」
「うん。炎上をバカにしたら名誉毀損だのなんだの訴えられるし、法に触れないやり方で考えてた。あと、炎上系はどぎついネタを話せないと面白くないし」
「実は! この人慈善活動に真剣なんですよ~とか言って、好感度狙うのずっこいわー。じゃあ、企画もここまでなんでこの辺でばらけますかぁ」
「はーい。ちゅ~ぶさんコラボありがとうございました。もしちゅ~ぶさんが炎上したら、小学校のとき図書委員やってて貸し借りの管理を人一倍頑張ってたこと晒しますね~」
「いやもっと良い美談あるやろ! なんで図書委員のこと知ってんねん! いつまでもデルトラ○エストを返さないヤツいて、シバいたろかな思ってたわ! ほなまたな!」
ポルン! と機械的な効果音が鳴ったあと通話が閉じられる。
関西人って自然とボケとかツッコミしてくれるから、それだけでも武器だよなー。
じゃあ僕の方も終わらせないとな。
「それではみなさん今日もありがとうございました。またのタレコミお待ちしております」
そう言ってマウスを握った時だった。
『ほんじょーさん! VTuberの藤井ユイがリスナーとの恋愛で荒れてるみたいですよ!』
コメント欄に現れた一つの文章。
僕の配信者魂がドクンと鼓動した。調査フォルダと表示されるファイルをクリックし『VTuber』のリストを更に進む。
藤井ユイ……そうだ、個人でやってる人だ。
黒髪ストレート・巨乳・制服姿で男の理想を忠実に再現したVtuberで、主にゲームをやりながらリスナーと交流する。
声優のような甘い声をしながら飾らない姿勢に好感度……か。
そんな人がなんで炎上したんだ?
「リスナーとの恋愛というと?」
『なんか、ある男性リスナーと妙に距離が近いらしいです。SNSでもその人だけ必ずリプ返してて、それを発見した他リスナーが騒いでるみたいです』
「わかりました。タレコミありがとうございます。では次の配信で触れることにしますね。ではさようなら~」
締めの言葉で括ったあと、僕はすぐさまキーボードを叩いた。
藤井ユイ……今は配信してないか。
SNSも更新無し。
チャンネル登録六万人で平均同接二千人ほど。凄いなこの数字。
僕の体感だと、ある程度まではチャンネル登録の百分の一が見に来ると思ってるから、優秀な数字だと思う。それだけ勢いのある人ってことだ。ちなみに僕は二千人登録で同接アベレージは二十人くらい。マックスは百だけど。
特に女性の熱愛関係は人生狂わすほどの反響を呼ぶこともあるから、今回もしっかり調べて話さないとな。
まさかこの一件が僕の配信活動を飛躍させる第一歩になると、この時は思っていなかった。
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