第101話 R-18ですか?

「いいから筋肉職務質問をさせろ。そこをどくんだ」


「お断り。ほんじょーは私の犬だから」


「あの、犬になってません」


 四つん這いになる僕の背中に座り続けるエチエチポリス。


 この人はいつまで座り続けるんだろう。


「おい見ろよあれ。女王様プレイしてるぞ」


「きっとムチでお尻叩かれて喜んでるんだろ。見ると不幸になるぞ」


 集まってきた野次馬にそんなことを言われる。


「違いますから! 僕は嫌なのにポリスが勝手に!」


「あら吠えちゃって。もっと可愛い声で鳴くものよほんじょー」


「ほんじょーってあれだろ。炎上擁護の人だよな。まさかあんな趣味あったなんて。がっかりだぜ」


「ああ。結構面白い配信するのに、本性はあんな感じなのか」


 なんだろう。


 ファンを失った気分だ。


 周囲を見渡せば多くの配信者が集まっていた。


 これ、みんなの配信で映ってるんでしょ?


 親に見られたらどうしよう。


 いや見ないけど。


「なんだこの騒ぎは……ってほんじょーくん、君だったのか!」


 この声は……


「モダさんですね!」


「動かないでほんじょー」


「あっ、ごめんなさい」


 って、なんで僕は謝ってるんだ?


「探したよほんじょーくん」


「僕もです」


「あら仲間が来たの?」


 よし。


 モダさんと合流できた。


 これなら逃げられそう。


 大御所のモダさんが一言発せば、この人はどいてくれるはず……!


「ほんじょー貴様……! そこを代われ!」


 えっ?


「あらモダさんじゃない。モダさんも、する?」


 えっ……モダさん?


「いいのか翡翠くん!」


「もちろんよ。あー、肩が凝っちゃったな~」


「もちろん揉ませてもらおう!」


 おいおいおい。


 もちろん揉ませてもらおう!


 えらいデカい声でそう言ったよね?


「どうだ気持ちいいだろ~」


「あーそこ! モダさんうまい!」


「下らん。俺はもう行くからな」


 筋肉ポリスは呆れた様子でパトカーに乗った。


「そこダメっ!」


「ここがいいんだろ~」


「やめないで! もっと!」


 僕は一体何を見せられているんだろう。


「エロすぎでしょ」


「BANされたら次呼ばれないよー」


 野次馬からそんな声が聞こえてくる。


 これは確かにダメだ。


 何がダメかと聞かれたら全てだ。


「ほんじょーもシたいでしょ? 好きにしていいから」


「遠慮します」


「ほんじょーくん。君はまだ世界を知らない」


「世界を知ったら、大人はそうなってしまうんですか?」


「愚問だな」


 その言い方ムカつくな。


「大人の世界を知ればみんなこうなるの。だからほんじょーも世界見たいでしょ? 知らないままでいいの?」


「そうだこっちに来い。そのためにスト鯖に来たんだろう?」


 世界か……


 なんか大人マウントされてるけど、僕の本心としては……


「ただセクハラしたいから揉んでるだけでしょーが!」


 思わず叫ぶ僕。


「なんだと! これがセクハラに見えるのか!?」


「セクハラです間違いありません! 誘われたからって男が手を出したら、男側が一方的に悪になるのが日本ですよ!」


「これは同意の上だ!」


「もうあんた滅茶苦茶だよ! 若い子が好きなんだろおっさん!」


「ムキーーー若造が偉そうにしやがって! 男の世界見せてやろーか!」


「見たくないです! もう僕は行きますからね!」


「おいいい! 勝手にイクな、俺はもう少しなのに!」


 おっさんの歪んだ性癖に巻き込まれるのは嫌だ!


「あ~冷めちゃったな~。モダさん、私行くね」


「待ってくれ翡翠! 俺を捨てないで!」


「ねえ何の騒ぎ?」


 えっこの声は……


「あら~みずきちゃんじゃない。いつ見ても可愛いね」


「ついさっき言われたばかりです。なんでほんじょーの上に座ってるんですか?」


「私の子犬。いいでしょ?」


「ここにも若い子が……!」


「……ほんじょーってそんな感じなんだ」


「そんな感じってなに!? 何を思ったか教えてよ! あとこれは不可抗力だから!」



 もうめちゃくちゃ。




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