第119話 大泥棒、ここに極まる⑦
七日目に突入したスト鯖。
あれから客入りは右肩上がりで色んな配信者さんが楽しんでくれた。
破産しかける人にはバイトを持ちかけ兵隊を増やし、北の銀行の情報も集まってきた。
全てが順調だと思えたとき、それは起きてしまった。
「おーおーここが違法賭博場か! ガサ入れに来たからなー!」
「こっちは大阪やぞー! 逃げたら痛い目にあわすかんな!」
嗅覚だけはいいポリス連中がやってきてしまったのだ。
「あ……どうも」
「またほんじょーかい。お前は何かと世間を騒がすことで有名やないか」
そのうち来るとは思ってたけどもう来たのか。
それだけこのスロット専門店スタンダードが有名になってるってことかな。
でも摘発されることはない。
だってここはただの、健全な、遊技場だからだ。
「お兄さんたちも遊んでって下さいよ~。ほら、座って♪」
さりげなく椅子を引いて着座させようとする並等さん。
さすがこの店の岩盤娘。
間違えた看板娘。
営業ができてる。
オーナーとして嬉しい限りだ。
「こっちは公務中やねん! スロットなんかせんわ!」
「またまた~。ポリスの人だって賭博好きじゃないですか~」
確かにパチンコ・スロット界隈と警察はズブズブの関係だ。
天下り先だからそういう意味では仲良しではある。
「おいおいおいおい。これかなり高レートで設定されてねーか?」
「そういう台ですよ」
ポリスの一人が台を舐め回すように物色する。
この世界に賭博に関するルールはない。
だからどんなレートでも違法にはなり得ない。
「現実で言うところの裏カジノちゃうのこれ?」
「なら逮捕やお前ら!」
現実ならアウトだけでここには裏カジノだと定める法律はない!
「いやいやそんな法律もルールもないですよここには!」
「なら今、ポリス権限でここが裏カジノだと定めた!」
それがまかり通ったら何でもありになるでしょーが!
「不当ですよ! 公平性に欠けます!」
「なんや盾突くきやな? こっちは大阪やぞ!」
「待って下さいポリスさん! 私たちはルールを守っていますし違法なことはしていません!」
「えーこちら違法カジノを摘発しました。応援をお願いします」
クソ、無線で応援を呼びやがったな!
強引に逮捕するきだ。
そんなことはさせないぞ!
「証拠映像ですこれは! ポリスの不当で強引な権利執行が行われています! 拡散して下さい!」
ギャーギャー騒いで野次馬を集めよう!
「並等さんも大声で騒いで! ポリスは正義じゃない!」
「あ――――ポリスにお尻触られましたー! エッチなことされましたー! 服を脱がされましたー!」
「あっおい! 大声出すな! あと変なこと言うな」
「またお尻触った! お触り禁止なのに肉体接触を強要されています!」
「わけわからんこと抜かすな! ほら、おとなしくせい」
「犯される――! 私ポリスの人に犯される――!」
「僕も――!」
「男には興味ないわボケ! お前らがいらんことで騒ぐから人集まってきたやないか!」
窓から周囲を見渡すと確かに野次馬が集まっていた。
公衆の面前で不当逮捕はできまい。
「おい聞いたか。ポリスがスロット店に押し込んで店員を犯したらしい」
「ウソだろそこまでやっていいのかよポリスって。正義のかけらもない連中だな」
ふふふ。いいぞ。
もっとだ。もっと噂を広めろ!
僕たちは捕まらない。
大泥棒を果たすその時まで捕まってたまるか!
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