第57話 類は友を呼ぶ
波瀾万丈の顔合わせは意外にも静かに進行していった。
焼く人、配膳する人、注文する人、会話を回す人、それぞれが役割を果たしていた。
「みんなはさー、なんで配信に身を置こうと思ったの?」
頬杖をついてボソッと呟いたのはプロゲーマーのHaYaTeだ。
腹一杯になって飽きてきたのかおしぼりを畳んでは広げ、畳んでは広げ、おぼろげに遠くを眺め。
構ってほしいのかな?
「金」
「うわ考えてそー」
「うっさいゲーマー」
「作曲したりすんの?」
この二人は会話のプロレスを繰り返すけどソリが合うのか会話が弾むことが多い。
「作曲? するわけないじゃん。配信すれば投げ銭貰えるし広告もあるから費用対効果が薄すぎる」
「でもさ歌い手なら自分の曲をバズらせたいってならないの?」
「うん。疲れるしミックス依頼でお金払うのヤダ」
「なーんか現実的だね~」
「僕も配信メインだけど僕の場合はヤラセって思われたくないからリアルを大事にしてる。必然的に動画編集がなくなって今のスタイルに落ち着いたから辻屋さんの考えは共感しやすいかな」
「手広くやるんじゃなくて有効的な方法のみってこと?」
「色んなことやるの面倒じゃないの? 配信だけなら配信だけの知識つければいいじゃん。変にタスク増やす必要なくない?」
「ジャンルが違うからかな~俺はゲームだからクリップ残しまくってSNSに上げて拡散してほしいのもあるから「これだけで勝負する!」って気持ちがわかんねーのよ。生放送もするし編集もするし、練習もするから毎日大変」
「だから範囲決めてやるんじゃん。もしかしてテスト前になったら勢いに任せて参考書集めるけど、結局半端に終わるタイプ?」
HaYaTeの言い分も充分にわかる。
配信だけだと配信に来た人しか僕を知って貰えない。
勝手に拡散されることもあるけどそれは少数。
じゃあ毎日編集して投稿するかって言われたらそれも違う。
実際の配信がつまらなければその人は二度と来ない。
そうなってほしくないから中身の擦り合わせをして配信する。
「じゃあさ、なんで歌い手になろうとしたの? ほんとに金?」
「それ以外何があるの? 簡単に稼げて人気になれてこんな美味しい人生歩みたくなるでしょ」
「僕は社会不適合者だったからです」
「ほんじょーは顔に書いてある」
それはウソだ。
社会不適合を自己開示してるわけがない。
いやそうだよね? ただの冗談で言ってるよね??
「ゲーマーくんは?」
「ゲームの才能を認められて気づいたらなってた。特に何も考えないでイエスを繰り返してただけなんだけど」
「悪い大人に悪用されるタイプね。美味しい場所まで絞り取ったらポイっ! っ捨てられる」
夢に出てきそうなこと言わないでよ。
「俺はそれでもいいよ。自分の力不足なんだなって認識できるし」
「ほんとに?」
「ウソじゃない。俺もほんじょーみたいに学校行かないでゲームばっかりしてた側の人間だから。でもそれは自分のせいであって、他の誰の責任でもない。だから自分がまた弾かれた時は自分のせいって割り切れる」
「待て待て待て待て待て。僕は学校に行ってた。誓って」
友達がいないだけだ。
ほんとだよ?
「外に出てみたら面白いことがあって、俺みたいな経歴の連中がめっちゃ活躍してんの。それ見て思うよね「頑張れば報われる」って。だから若い内にHaYaTeって名前を覚えて貰って世界で戦うんだ」
「ぐす……いい話じゃん……」
え、泣いてる?
「私だって人並みに青春したかったし甘い物食べたいしお昼寝とかしたかった…………」
いやいや感極まりすぎじゃないですか?
あと欲望が幼稚園で止まってません?
この人存外涙もろいのね。
「人はみな孤独だ」
「
「人は孤独には勝てない。だが覆す物もいる。それは『楽しめるタイプ』の人間だ。自分や世の中をもっと信頼できれば孤独はさほど感じない」
「大亜紋度さんどういう生き方をしてるんですか?」
「自分の有りのままを時代に刻んでいる。
「かっこいい……」
「ところでその肉はいらないのか? 所持金が底をつきそうなんだ、いらないなら頂こう」
「か、かっこ悪い……」
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