第48話 先生怒らないから正直に言いなさい②

 むっふっふっ。


 所詮は中学生か。


 こんな簡単なハニートラップに引っかかるとはな。


 やることは一つ。自然な流れで情報を引き出すこと。


 きらなちゃんとみあちゃんとの三角関係においてどこで何がこじれたのか。


 どうにかして聞き出さないといけない。


 でも勘違いするな。翔太くんを陥れることはしない。


 なるべく波が立たないように終わらせるんだぞ。


 でもこのやり方は僕にヘイトが向くかも知れない。だからって翔太くんの居場所を奪わないようにしないとな。


『カジュアルマッチいこー。実力見たいなー』


『任せとけってw』


 そして互いに準備完了のボタンを押してマッチ入室、キャラ選択画面へ。


 僕は初心者御用達のヒールキャラを選択し、翔太くんは強者が好む前線で戦う移動キャラを選ぶ。


 このキャラを選ぶってことはそれなりに自信があるんだろう。


 このゲームにおいての花形キャラだから弱いとチャット欄で『?』とか書かれたり、オープンVCで「下手なら使うな!」ってキッズ特有の甲高ボイスで罵られることがある。


 僕もこれをされたことがあって凄く嫌な気分になった。一応暴言ってことで通報はした。ざまあみろ。


 降下画面に切り替わり広大なマップが映し出される。


 このタイミングでまたチャットが届いた。


『激戦区に降りたいけど勝ちたいから過疎地に降りる』


 激戦区ってのは初動で人が集まりやすいランドマークのことだ。


『すごいそんなことまで考えてるんだ!!! カッコイイ!!』


『任せろって俺マスターだからw』


 ほう。マスターか。マスターってのはこのゲームにおけるランクマのティア。


 上位数%しかいないランク帯だから相当腕に自信があるんだな。


 ちなみに僕はダイヤの底辺です☆


 そんじゃあ、お手並み拝見だな。



☆★☆



 あれから数分後。


 部隊は残り三部隊となった。


 翔太くんは口だけじゃなくて確かに強かった。位置取りやエイムは確かなものだった。


 さすがマスターなだけある。


 マッチのレベルが低いだけなのかもしれないが。


 サブ垢でやってるからスマーフって行為だけど、目的が違うのでそこは目を瞑ってほしい。


 終盤で部隊が少なくなると戦いに行くより、ポジションを意識して立ち回る必要がある。


 つまり暇な時間が増えるわけだ。


 翔太くんも暇を察したのか早速チャットを送ってきた。


『敵弱くね?』


『syo-taくんが強すぎるだけww』


『それなw』


『これだけゲームが上手いとモテるんでしょ?』


『毎日誘われて大変w 違うお誘いとかこないかなー』


『違うお誘い?』


『ゲームじゃなくてリアルで会いたいって思わない??? 他校の女の子とかでさあ、いっつもゲームだけで終わっちゃうからつまんねー』


 お前さっきモテるからって言っとったやんけ。


『どういうこと?』


『わからない? せっかくなんだから会って遊ぼうよってこと。絶対ゲームするより楽しい』


 ここは押しても良さそうだな。


『確かに! だってゲームだけじゃつまんないもんね!』


『だよね! クラスの女子とかいっつもゲームだけで終わるし、せっかく付き合っても何もさせてくれないで別れるから退屈なんだよね』


『今は彼女いるの???』


『VC繋ごうよ』


 そう来たか。


 でも残念。VC繋いだら自称イケヴォ(笑)を聞くことになるからやめておけ。


 というよりいきなり見知らぬアカウントからフレンド申請されて、何の疑いもなしにゲームしてることに違和感。


 僕はすぐに裏を探っちゃうからとてもゲームしようと思えない。


 最近の中高生ってSNSの使い方がだいぶ緩いから、こういうの慣れてんのかな?


 それがバカッターに繋がってる気もするけど今は関係ないからこの話題はお終い。


『話すのはヤダ。苦手だもん』


『俺に彼女いるから嫉妬しちゃった?w』


 なんでもかんでも草を生やすな。


『あー彼氏欲しいなぁ〜』


『俺がなってあげようか?』


『だって彼女いるじゃん……』


『別れるし』


 ヒエ……。


 最低やんけコイツ。


 この感じだと翔太くんが二人の気持ちを弄んだ感じになりそうだな。


『聞いてよ』


 ん? なんだ?


『好きな子がいるんだけど、まだ自信がなくて告白出来なかったんだ。だからイツメンの他の子に告って色々と自信をつけてからその子にアタックする気でいた。だけど俺が付き合うってなってから本当に好きな子に嫌われて大変なことになったんだ』


『よくわかんない』


 ここだ。


 ちゃんと誘導出来たな。


『今の彼女と付き合うって言ったら急に態度が変わってハブられそうになったから、彼女と距離置いて好きな子に嫌われないようにしてるんだけど、どうしたらいい? 俺は本命の子と付き合いたいけどまだ自信がないから告れない。せっかく彼女出来たし経験したい』


 コイツ……。


 要はみあちゃんが好きなんだけど自分が未熟でカッコ悪いからきらなちゃんで大人のことも経験して、準備できたらみあちゃんに告る気でいた。


 でもみあちゃんは翔太くんのことが好きでいたのにきらなちゃんと付き合ったから失恋して荒れてあーなった、と。


 うーんなんとも言えない。


 しかし翔太よ。君は何て最悪な男なんだ。


 きらなちゃんとえっこらえっこらして場数踏めたら今度はみあちゃんとえっこらえっこらする気でいたんだな。


 思春期なら仕方ないかもしれないけど、それは心の中にしまっておくのが賢明だ。


 でも疑問が残る。


 みあちゃんは翔太くんに何かされている様子だった。


 怒ったみあちゃん。ハブられそうになって逃げた翔太くん。ハブられたきらなちゃん。


 まだ明かされていない闇があるはずだ。


 もう少しゲームを続けて解き明かそう。






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