第94話 最大のギャング組織作ります
辺りはすっかり暗くなり道路は街灯で照らされている。
バイクで逃走した僕たちはそのまま郊外に逃げ、ポリスを振り切ることに成功したのだが。
「まさか指名手配されるなんて……」
周囲は膝の高さまで伸びた雑草が一面に広がる。
そんな場所で
「ありゃりゃ~警戒レベルマックスの指名手配ですか。私たちも有名になったね」
「うん。すっごく悪い意味でね」
僕は抑揚のない声で返す。
「足がつかないようバイクは壊したけど、ほんじょーどうする?」
「あのさ、壊すまでしなくてよかったんじゃないの?」
気づけば互いにタメ口で話していた。
だってこの悪ガキが散々ワガママ言った上に大事なバイクを証拠品だからって燃やしたんだもん。
ちょっとした口喧嘩になったし、おかげですごく疲れた。
どうやって逃げるんだよこの先。
見つかったらひとたまりもない。
「甘いねほんじょー。私には大金がある。バイクなんてメカニックから買えばいいんだよ」
「はいはい。捕まる前に街に戻れたらね」
「もーさっきから否定的だなー! 謝ったじゃんか!」
「怒ってるわけじゃないよ。そのお金の使い道を考えないとね」
大事な大事な五百万。
絶対に失いたくない。
「でもさ、ちょっと面白くなってきたじゃん? これだけお金があれば金に物言わせて味方増やせそうだよ?」
いや言い方……
「確かに仲間は欲しいね。あっ隠れて!」
視界の先には蛇行運転するパリピな車が見える。
あれはNPCじゃないはず。きっとプレイヤーだ。
「ほんじょー味方になってくれるかもしれないから行ってくるね!」
「あっ待って並等さん!」
立ち上がり走り出す僕ら。
「お――いここでーす!」
そして車道に飛び出す並等さん。
蛇行運転の車はドリフトしながら止まった。
運転手は誰だろう?
「おー元気だねー君たち。危うく轢いちゃうところだったよ」
……あれは僕をカツアゲしたかきよしさんだ!!
汚い金で車を買ったんだな!
「こんばんはVTuberの並等カナです!」
「おーこんばんは。二人はデート中?」
「かきよしさん。あの時ぶりですね」
「君は~ほんじょーくんか。お金、ありがとうね」
白々しいなこの人!
「ここで何してるんですか?」
「それがさー車買ったらお金なくなってさ~。次なるカモ……ゲフンゲフン。お金をくれるありがたい人を探してたんだよねぇ~」
「お金ですか? たくさんありますよ♪」
「並等さん! 喋っちゃいけない!」
いきなりお金の話しを切り出すなんて! おバカな子だなほんとに!
「えーほんとに~。助かるな~いくら出せるの?」
「かきよしさん。またですか?」
「どゆこと?」
「あなたは僕をカツアゲしました」
「嫌だな人聞き悪い。物騒なこと言わないでよ」
「カツアゲ? ほんじょーカツアゲされたの?」
「そうだよ」
「……だっさ。田舎もんかよ」
「ファ!? 並等さん!?」
「ううん冗談。マイケルジョーダン」
つまんねーよそれ。平成なら爆笑だったよ。
そこはカツアゲに怒るとこでしょ。
というかそうだよ田舎もんだよ。悪かったな。
「じゃあこうしようよ二人とも。仲間になるから活動資金を分けてほしい。それならいいでしょ?」
「交渉成立です。じゃあ五十万を……」
「並等さん! ダメ絶対!」
「違うよほんじょー。私たちはスト鯖で爪痕残さないことには現実に帰れない。このままスト鯖が終わったら死んだのも同然」
君、ゲーム内で死んだらリアルでも死ぬことになるあのデスゲームにでも参加してるの?
「おー意識高いね! いいことじゃん人気になろうと真剣になってるんだから」
「ほんとに協力してくれますか?」
「もちろん」
「ほんじょー。私の目標は最強のギャング集団を作ること。二人で頑張ろうよ」
……そこまで言うのなら…………
「決まりかな。じゃあさっき言ってた五十ま――」
言いかけた直後、かきよしさんのキャラはその場に倒れた。
「ええええどうしたの俺!?」
身体を中心に血だまりが破門状に広がっていく。
「オラーかきよし待たんかい!」
「大阪やぞこっちは!」
聞き覚えのある声。
それに大阪という単語。
「やっばポリス来た!?」
「逃げるよほんじょー! 乗って!」
ファッキンかきよしの車に乗り込みポリスから逃げるよう車を出す。
また無免許運転だ。
「ここ見てほんじょー!」
「どこ!?」
「マップにピン差したからそこに向かって!」
赤いピンが差すのはマップ中央の警察署から北方向。
今南西にいるから結構距離がある。
「かきよしさんが自主的に囮になったから行けると思う!」
「でもどうしてここなの?」
「私が最初に来たエリアがここなの。廃墟が多いから隠れ家になる」
「そりゃいいね。そうしよう」
スト鯖初日から逃亡生活。
うん、これも悪くない。
たまにはカッコいいとこ見せようか!
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