第52話 行くぜ東京待ってなコラボ
きらなちゃんたちの件から数日が経った五月のある日。
あれから仲良く学校生活を謳歌していると連絡があった。
二人とも因縁を残さずしっかり打ち解けたみたいで前より仲が深まっているようだ。
それであれば手伝った甲斐がある。
もっとも、勝手に頭突っ込んだわけだけど。
何はともあれ悩める中学生を救えたのは大きな収穫だ。
今後の配信で若い子と絡めるかもしれないから。少しだけ幅が広がったぞ。
そんな配信者モードになっていた僕を現実に引き戻す一通のメールが届いた。
もちろん忘れてなんかいない。真砂さんとのコラボに関するもの。
モニターに映るのは日時や場所が指定された業務的なメールだ。
実際に正式なオファーが届くと少しちびっちゃう。やべ、パンツが湿ったかな。
……いや大丈夫。危ない、良い歳してちびるところだった。
指定された場所は東京にあるスタジオだ。調べると芸能人とかがラジオ放送で使う立派な場所らしい。
そんな場所に僕や有名ストリーマーが招待され交代制でドンドンコラボしていくって流れだ。
にしても真砂さんは凄い。
僕より十個以上年上なのにまだ長時間配信する体力を持っているなんて。
僕だってたまには何時間もやるけど、若いからできるのもある。
僕が十年後にロング配信できるか問われた正直わからない。
まず十年経っても前線で活躍してる補償もないからこれは未知数。
おっさんになればあっちが痛いこっちが痛いって口癖のように言い続けて座ることすら困難になってるかも……
こう考えると配信者の寿命って人気だけじゃなくてスタミナや健康にもよるよな。
有名VTuberが体調崩してリフレッシュ期間に入るってよく見るし、僕もいつかはそうあるのかも。
って踏まえたら、やっぱり真砂さんは凄い。
さすがは配信のパイオニア。
一億くらい分けてください。
っと冗談はここまでにして、メールの下の方にコラボ告知してもいいって書いてあるから早速SNSを更新しよう。
『朗報 配信者ほんじょー、真砂伸一とコラボする』って文章に概要のリンク貼っつけておけば参加者一覧を確認できるから……
よしこれでOKっと。
できればたくさんの反響があるといいな。
相変わらずチン凸とふざけたメッセージが来てるけど、全員垢BANしてくれや。
なんで通報してんのに無罪放免なの?
運営仕事して。
僕の規模でこれなら大手さんはもっと酷いんだろな。
特に女性は。
お? 早速通知が。
『草』
草ちゃうわ。何がおもろいねん。
レスバすっか? おおん? こちとら時間だけはあるんやぞ?
オメーどこ中だよ。
あっ藤井さんからも来てる。
さすがVTuberだ。夜中までしっかり起きてる。
でも妙な瞬発力だな。もしかして僕のこと監視してる?
『おめでとうございます!! 当日見ますのでなんかその、頑張ってください!!』
かつて助けたVTuber藤井ユイさんがメッセージをくれた。
でもさ。なんかそのって部分要らなくない?
言うことないから適当に修飾した感が否めなくて悲しくなっちゃう。
『大爆笑待ってますほんじょーってめっちゃ面白いもんね(笑)』
これはみずきさんだ。毒舌女王で売ってるけどこれは毒舌か?
純粋に煽ってきてない? 僕の勘違い?
あーそうかわかったぞ。僕の大躍進を見て妬んでるんだ。
全く可哀想な人たちだ。人の成功を素直に喜べないなんて……共に戦った仲間として切ないよやれやれ。
という冗談はさておき。
『藤井さんの応援があってここまで来れました! 全力で頑張るので配信楽しみにしててください』
と送り、
『死ぬほど笑わせますよ! 死んでも責任取りませんから(笑)』
と返事した。
ちょっと言葉のセンスが古い? こんなもん?
まぁこんなもんだろう。
焦るなほんじょー。まだ慌てる時間じゃない。
もう少しトークの練習して本番に臨めばいいんだ。リハーサルだってあるしきっと大丈夫。
待ってな東京。田舎モンがカチ込んでやるからなっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます