第112話 小休止

 スト鯖四日目の夜。


 僕たちはなけなしのお金で買ったマイハウスに戻っていた。


「たっだいま~我が家~」


 いつも以上に話したから喉が痛む。


 その勢いでソファに倒れ込んだ。


 んで、僕自身もベッドにダイブ。


「ちょっとマイクから離れてる~」


「え、なに?」


「マイ……らは……れt」


「聞こえないって、近づいてよ!」


 んぎゃああ疲れたよ~


 とにかく謝り倒したからなんか謝るの上手くなったかもしれない。


 いらないスキルだけど、社畜になったら活用できそう。


 まぁ本当にそんな場面が訪れたら、逃げるだろうけど。


 背伸びをしながらポケットのスマホを取り出す。


 時間は十九時。


 ご飯とお風呂に入らないと。


「並等さーん! 僕ご飯食べてくるー!」


 聞こえるかわからないけどベッドの距離からマイクに向かって叫ぶ。


 しかし喉が痛むな。


 さすがに休憩しないと。


「はいはい戻りましたよ」


「ねえ遠くから話さないでくれる? 全然聞こえないんだけど」


「僕はご飯を食べてお風呂に入ります」


「あっそう。私もお茶にしようかな」


 お茶て。


 この時間からお茶注ぐんか。


「たぶん二十一時あたりから再開するんで」


「私は遅れると思う」


「そうですか。じゃあ並等さん戻ってくるまで家にいようかな」


「……待っててくれるの?」


「だって一人にさせると炎上するもん」


 ヘッドセット越しに台パンする音が届いた。


「もうしないから。別に待たなくていいよ」


「さいですか。じゃあ僕はこれで」


 短く締めて僕はログアウトした。


『並等反省したみたいだな』

『かなり落ち着いた雰囲気になってる』

『そりゃほんじょーが代わりに謝ってくれたんだから、頭が上がらないだろうよ』


「みなさんからしてどう映りました?」


『負けたくないのはわかるけど、悪い形になってた』

『頑張りたい気持ちが出過ぎてた』

『心が身体を追い越していた』

『そんな歌詞があったような』


「やっぱりそう見えますよね~」


『でもさ、今回の件はほんじょーの株が上がることないじゃん? やるだけ損じゃないの?』

『バカタレ。ほんじょーは炎上の全てを擁護するんや』

『見返り求めてほんじょーは今の活動やってるわけじゃない』


「いやまあ欲を言うと炎上コンテンツを扱って人気を得たい気持ちはあるっすよ。でもそこにエゴはないし助けたいって気持ちだけなんで」


『まぁプチ炎上くらいならもう朝飯前か』

『前より安心して見れるようになってきた。前は冒険するタイプだったから』


「そりゃ安心して見れるコンテンツですよ。いつもスタンダード! やること大抵一緒! ルールは破らない! リスナーの諸君に約束する!」


 ――とりあえず夕飯食べよ。





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