第113話 大泥棒、ここに極まる①
五日目を迎えたスト鯖。
残りの日数は六日。
もう折り返し時点での支配率はこうだ。
ポリスが六十五パーセント。で首位。
探索者は二十五パーで、我らがギャングは十パーに留まる。
相変わらずポリス独走状態。
毎日のようにギャングは捕まり罰金を取られる日々。
現状打破のために僕はバディに呟いた。
「並等さん。ついに温めてきた作戦を発表します」
突然の宣言に動きを止める並等さん。
この作戦はとっておきだ。
「街の北にある大っきな銀行を叩きます」
そう。
これは大規模な銀行強盗だ。
北の銀行は面積が大きく従業員が多い。
加えて街の大小様々な企業と取引しているという設定。
つまり街銀行ではなく、メガバンクと言い換えることができるだろう。
毎日多額のお金が動くとされている重要な銀行なのだ。
なぜ狙ったかというと、どえらい金額を盗めるからというのもあるが設定上この銀行は破られたことがない。
不敗神話の逸話を持っているらしい。
配信者のみならずNPCが常勤しているくらいガードが堅い。
だからこそ、その神話を破るために叩くのだ。
「北の銀行ってあの大きな銀行のこと?」
「その通り」
「いやいやバカ言わないでよ。警備力も強さもレベチだったよね」
「だからこそですよ。スト鯖界隈に風穴を開けるためにやるんです」
「反対はしないけどさ」
「じゃあやろう。一応ね、最終日にやるつもりでいるんだ」
ここで僕は自分の構想を語った。
「――というわけで」
「ちょちょちょっと待って。協力者がいること前提で話してるけど、そんな人どこにいるのよ?」
「今は……いないかな」
「バカなのは知ってるけどちょっとひどくない?」
「何を言っているんだね並等くん。お互い様だ」
「うっさい!」
右ストレートを腹部に受ける。
「だいたいね、あの件からおとなしくしてたけどさ、ちょっと調子に乗ってない?」
気のせいさ。
「気のせい」
「はぁ? 可憐でピチピチの若い子が近くにいていい気になってるんでしょ」
「おかしいよそれは。この家に可憐でピチピチな女の子はどこにもいない。岩盤のように固くてゴツゴツ……ぶへら!」
な、並等さん!?
それはフライパンだ、人を殴る道具ではない!
おかげで失血したぜチクショー!
「スト――ップ! 殴るの禁止!」
「やかましいボケが! その口一生聞けなくしてやるっ!」
フライパンを片手に猛然と迫り来る並等さん。
そういえばPvPも見所のゲームだった。
残り六日、とことんやってやる。
フライパンをぶん回すバイオレンス女から逃げられたら……な!
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