第21話 みんなは一人のために

 第四試合。


 この試合もキルポイントの上限が上がり、順位ポイントと合わせて多くのポイントが獲得出来るようになる。


 それまで下位にいたとしても、ここから一気に逆転出来るシステムになっているわけだ。


 もちろん僕たちも上位目指して戦場に飛び込んでいく。


 戦線に趣けば激しい戦闘が繰り広げられていた。


「みずきさん僕の回復アイテム無くなりました!」


「私もあと一つしかないです……」


 キルを拾うために無理ない距離から攻撃していたが、ずっと張り付いていたのでアイテムが枯渇してしまった。


 弾薬も底が見えてきた。


 倒した相手から物資を奪えるが、前に出ることも出来ない。下手に飛び出せばフォーカスを浴びるからだ。


「私も余裕ない。最終リングは向こう側か……」


「移動しますか?」


「リング収縮に合わせて動きたい。今はじっとしてて」


「わかりました!」


 たぶん、他の部隊もリングと共に動くと予想しての判断だと思う。


 そしたら、余計な被弾はもらわず様子だけ見ていよう。


「……やっぱり動く。あの岩の裏まで走るよ」


 そう言ってみずきさんだけ飛び出した時だった。


 ――パアン! と乾いた銃声が響き、みずきさんのキャラは何もない場所でダウンしてしまった。


「高火力スナイパー……か。二人とも逃げて」


「ほんじょーさんこっち来て!」


「え、そっち行くの!?」


 藤井さんはみずきさんのとこまで走り出した。


 でも隠れる場所はない。


 スナイパーが狙っているというのに。


「私が盾になるからみずきちゃんを蘇生してあげて!」


「ユイ逃げてよ! 私のミスなんだから置いていって!」


「このチームはみずきちゃんあってのチーム。どんなことがあっても生き残ってもらうんだから! ほんじょーさん早く!」


 いやスキル使えば……あ、そうか。さっきの移動で使ってたんだ。


 藤井さんが前に立ち僕はみずきさんを蘇生する。


 蘇生までは七秒かかる。


 果たして……


 ――パアン!


 二発目が放たれ今度は藤井さんがダウンした。


 あと二秒、一秒……


「よし! 向こうまで走りますよ!」


 幸い、あのスナイパーは連射出来ないしリロードも遅い。


 みずきさんを起こしたはいいが、結果的に一人失う形となった。


「なんで助けようと思ったの?」


 命かながら遮蔽物に隠れるとみずきさんは囁いた。


「みずきちゃんのチームだから」


「でも私のミスだった」


「生き残る上で重要なのは、みずきちゃんが残ること。私たちにそれ以外の勝ち筋がないんだから」


 なんか言いたいけど、入れる空気じゃねえ……


「みずきちゃんが思っている以上に、私たちはあなたを信用しています。みずきちゃんの性格も充分にわかってるし、好きで言葉を悪くしてるんじゃないってところも」


「なんで信用出来るの? 深い付き合いでもないのに」


「女のカン」


「そう。変わってるね」


「それはお互い様。ほんじょーさんも信用してる」


「僕も信用してますよ!」


「ほんじょーはアホだからウソつけないだろうし、ある意味信用してる」


「ほんじょーさんは勝手なお願いしても真剣になってくれますから」


 お、おふ……


「じゃあほんじょー。私はまだ負けたと思ってないから、最後までついてきて」


「はい!」


 でも元気なのは声だけで、キャラは瀕死状態。


 最終リングまで生き残ったが、集中砲火を浴びて抵抗空むなしく壊滅に至った。


「すごい三位だよ!」


「あの状態から三位なら上出来ですよ!」


「総合は七位、一位は変わらずさつきたち。次が最後だからね」


「暴れてやりますよ!」


「はい、血祭りにして差し上げましょう!」


 さらっと残酷なこと言うんだな。


「最後くらい本気だそうかな。ちゃんとついてきてね二人とも」






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