第20話 風向きが変わる

 第三試合は順位が振るわないチームがこぞって動き出した。


 キルポイント欲しさに序盤から仕掛けるチーム。


 最終リングを予測してガッチリポジションを固めるチーム。


 どのチームも勢いが変わり熾烈な戦いを見せていた。


「ほんじょーこれ漁夫るよ!」


「了解! 後ろは来てません!」


「スキル行きます!」


 藤井さんのスキルでスモークを張る。


 漁夫る相手は戦闘直後で準備が出来ていない。


 最適なタイミングだ。


「スモークの中で戦って!」


 真っ白なスモークの中に突っ込む僕。


 微かな音を頼りに相手の場所を探る。


「岩裏に隠れてます!」


 そこには身を寄せ合うように三人とも隠れていた。


 僕はすかさずグレネードを投げ込む。


「グレネード!!」


 慌てて飛び出す三人。


 残念だったね。包囲網を敷いているのだよ。


「ワンダウン!」


「こっちも!」


 最後は僕が……


「……チャンピオーン!」


 三人目をヘッドショットで倒してやった。


「まだ十部隊残ってるから落ち着いて」


 あぁいけない。


 やっとファイトに勝てたから優勝したもんだと思ってしまった。


「すぐ漁って移動するから」


「この試合からキルポイント上限が緩和され出すから、どのチームも拾えるキルを狙いに行ってますね」


「部隊減りも早い。あとは順位意識して戦うよ」


「わっかりました!」


 それにしても動きやすい。


 みずきさんの指示が的確になったし、僕も周りが見えるようになった。


 なんかこの感じ……そう! 体育祭に似てる。


 普段、女の子から応援されることないけど、急にめっちゃ話しかけられるあの現象。


 そして終わった瞬間に目も合わせてくれない。


 世の中とは残酷だ。


 更に言えば打ち上げにも呼ばれずSNSで打ち上げがあったことを知り、発狂したくなる。


 うっ胸が苦しい……


「ほんじょーどうしたの?」


「あっいや、何でもございません」


 この二人はどうだろう。


 大会が終わってもゲームしてくれるかな?


「じゃあ移動するから。極力ダメージを貰わないこと。いい?」


「了解!」


 その後は戦闘を避けながら移動を繰り返し、第三試合は三位でフィニッシュしたのだった。


「やったあ三位ですよ!」


「まあこんなもんか」


「みずきちゃん! 総合十一位です!」


「次の作戦言うからしっかり聞いてね」


 喜ぶのも束の間。みずきさんはつらつらと作戦を話す。


 この順位ならまだまだ優勝圏内。


 第四試合は今と同じようにキルポイントを拾いながら順位を稼ぐようだ。


『おいおい俺たちを忘れないでくれよ』

『これが輝かしい青春……』

『やめろおまいら。全員悲しくなるから』


 いけない。


 全然コメ返ししてなかった。


「いやーみなさん。どうですか僕たちの連携」


『さっきより纏まってる』

『一時はどうなるかと思ったけど、大丈夫そうだな』

『毎回ドラマを見せてくれるねえ』


「まあ僕の活躍ってより二人のおかげですけどね」


『ユー優勝しちゃいなよ!』

『さっきほんじょーにやられた』


「え? マジすか。死体撃ちしとけばよかった」


『おい』

『あ。炎上案件です』

『このろくでなしを燃やせ』


「冗談ですって。じゃあ四試合目行ってきます」


『ノシ』

『頑張れよ』

『今度リスナー参加型のゲーム配信やって』

『それやったら全員ほんじょー倒しにいくやん』



「戻りました~」


「あっほんじょーさん遅いです! さっき会長が通話に上がったのに、ミュートにしてるから会長行っちゃいましたよ!」


 え?


「会長が? 何か言ってました?」


「励ましの言葉だったけど、ほんじょーと会話したいようだった」


 くっ、なんて失態だ。


「そうですか」


「そうですか。じゃないですよ! 急にほんじょーさんが死体撃ちって言うから変な空気になっちゃったんですよ!」


 !?


 もしかして相手側音声をミュートして、僕側の音声は入ってた感じ!?


 やっちまったな!


「会長はゲーム用語知らないからいいけど、私たちはわかるから気まずかった。コメントも少し荒れた」


「……それはご迷惑お掛けしました。その辺は冗談で言ってたので、僕の配信を見て貰えばわかります」


「変なこと考えなくていいから集中して」


「はい……」


「第四試合、行くよ」





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