第117話 大泥棒、ここに極まる⑤
「だー負けたー!」
片方の台から悔しさ成分の混ざった声が聞こえてきた。
「もうちょいでプラスに戻せたんだけどな~。おいそっちは?」
「わり。ちょい勝った」
もう片方は控えめに勝ったことを報告した。
「うっそお前勝ったのかよ。後でおごれよー」
「言うてもほんとにちょい勝ちだから飲み物くらいだなおごれても」
その会話を聞いて僕は深いため息をついた。
だって、ポンコツ女が設定間違えやがったから大負けすると思ってしまったさ。
だけどいい感じに沼ってくれて片方が負けでもう片方はちょい勝ちと言う結果に。
つまり二人合わせればトントンってわけだ。
よかったよいきなり廃業にならなくて。
「やったねほんじょー。危機は去ったみたい」
ポンコツは僕の横で小さく呟いた。
「僕なんて心臓の鼓動が速すぎて具合悪くなりそうだったんだから。血圧上がったね」
僕はほんとに心臓がぎゅーっとなったのに、並等さんはふへへと笑う。
このアバズレめ。
少しは痛い目を見てもらおうか。
「並等さん。ここで帰らせちゃいけないよ。もっと打ってもらわないと」
「え? だってこのまま帰ってもらえればいいんでしょ?」
「それじゃあ儲からないよ。時間を稼いで、僕は設定変えるから」
手短に作戦を伝えると並等さんはキッとした目で僕を睨む。
行くんだ、コーヒーレディとして。
「おっ兄さ――ん! コーヒー飲みませんかぁ?」
いいアニメ声だ。
さて、僕は鍵を持ってと……
「私よくわかんないんだけど、すっっごくカッコ良かった! 疲れた身体にコーヒーどうぞ!」
「気前がいいねお嬢さん。VTuberだっけ?」
「私のことはいいからお兄さんのこと教えてよ~」
「そうやってもっと金使わせる気でしょ? バレバレだけどな~」
「えーカナそんなことしないよ? ほらそっちのお兄さんもどうぞ♡」
「いや裏あるっしょこれ! 楽しかったからまた来るよ」
「てへっ☆ バレちゃったか~」
……もっとうまくやってくれるかと思ったけど存外普通の演技だな。
でもこっちの準備は完了だ。
「カナもっと遊びたい~もっとやってよ~」
「プラマイゼロは勝ちだから勝ち逃げかな。また来るって」
あっ。
帰っちゃった。
「あーん待ってよ~! 私はもっと……いっちゃったか」
「どんまい」
「どんまい?」
「うん。どんまい」
そう。どんまいだよ。
「結構勇気出してやったよ?」
「バリ凄かった」
「ねえこれじゃあ恥ずかしいだけじゃん! あの二人にそういうキャラだって思われたらどうするの!」
「そういうキャラでいればへっちゃらさ!」
直後回し蹴りが飛んでくる。
「チョ、怒りすぎだって!?」
「コロス! コイツは殺さなきゃダメだ!」
開店早々刀傷沙汰ですって。
Wordの調子が悪いので空欄・行間が変だったら申し訳ない。
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