第124話 事後
「みなさまお集まり頂きありがとうございます。ただ今より、今回のスト鯖の結果発表を行います!」
壇上でマイクを振るうのは運営の人。
今の言葉で会場の熱気が一段上がった。
「今回最も輝いていたのは……ポリスチームです!!」
「うおっしゃ――――――!」
「大阪がてっぺんやぞー!」
「えー今回は街の支配率をかけてみなさんに争って頂きましたが、ポリスチームは最後までトップを走り続けていました。みなさん、今一度盛大な拍手をお願いします」
『ポリスだってよ』
『おめでとう』
『最後あんなに活躍したのに。なあほんじょー』
「まぁ……最後だけでしたから。それまで何もできなかったわけですし」
そう。
最後は頑張った。
「いやーギャングチームめっちゃ頑張ったけどな~」
「ほんじょーくんと並等さんの馬鹿力がひっくり返すかと思ったけど、甘くなかったね~」
近くにいたギャング配信者がぼそっと呟く。
「いえいえ。みなさんが手を貸してくれたので盛り上げることができました。ご協力ありがとうございました」
「楽しかったよ。どこかでコラボする時が来たらよろしくな」
「はい!」
僕は短く告げてから周囲を見渡す。
さっきから相棒の姿が見えないけど、この会場に来ているはずだ。
彼女のことだから隅っこで小さくなってるはず。
……あぁ、たぶんあれだ。
早めに声かけないとまたぐだぐだ言われそう。
僕は小走りで近寄ると、椅子に腰掛け微動だにしないアバターの前に立つ。
「来ないって聞いたけど、やっぱり来てたね」
「…………うっさい」
「負けちゃったけど最後の盛り上がりは半端なかったってみんな言ってるよ。ほら、みんなのとこに行こうよ」
「……嫌」
「どうして?」
「だって……最後私が下手こいたから捕まったじゃん。全部私が悪い」
「僕としては並等さんがみずきさん倒してコード知るまでがクライマックスだと思ってるけど? あの部分だけ切り抜くと同接すごかったし」
「違うじゃん。金庫破りして、逃げて、逃げて、逃げて。ポリスから逃げ回って。支配率逆転するまでが今回のシナリオじゃん。でも私がミスって捕まったから負けちゃった」
「違うって。逃げるとこはもうエンドロールみたいなもんで、強盗を成功させた時点で半分僕らの勝ちみたいなもん」
「……」
「約二週間。並等さんとこのゲーム出来て楽しかった。スト鯖自体初だから緊張しまくったけど、僕と似た境遇の人がいてくれてすごく心が楽になれた」
「……そう」
「僕はもう落ちるけど、またコラボできたら嬉しい。僕の通話ID送っておくから、今度FPSでもやろうね」
「はいはい。一生寝てていいから」
それじゃ、と別れの挨拶をして僕はログアウトをクリックする。
「えー、ではみなさんこれでスト鯖配信は終了です。今日もスタンダードでしたが、これからもスタンダードな配信をしていくことを約束します。それでは!」
『乙』
『またな』
『お疲れさん』
『楽しかったよ』
僕の配信者人生にとってかけがえのない時間が終わった。
明日からスタンダードに戻るけど、僕はいつだってスタンダードさ。
☆あとがき☆
6章をご覧頂きましてありがとうございました。
これにてこの章は終了です。次回から7章を上げますので今後ともよろしくお願いいたします。
有名人の炎上を擁護する配信をしていたら、VTuberや大手配信者に気に入られそれはもう凄いことになりました。 ろっし @rossi64
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。有名人の炎上を擁護する配信をしていたら、VTuberや大手配信者に気に入られそれはもう凄いことになりました。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます