第75話 今は優勢
「ようやくお出ましですね。みなさんここからが本番ですよ!」
時刻は零時。
スタートから二時間経過したところであかぼんの手先が増え始めた。
『荒らしていい配信はここですか?』
『いやいや同接五百人かよww その辺のVTuberくらいじゃんww』
『ほんとに売り上げてんのかこれ? 赤スパ飛んでないし貧乏人しか集まってないんじゃないの???』
認めたくないが確かに配信が盛り上がっているとは思えない。
横一線で推移しているのは否定……できないな。
「まだ少ないですが顔を出し始めましたね。いいですかヤツらはカメラが席に寄ったときにアンチコメントをしてお客さんの機嫌を悪くするはずです。僕らはそれを止めますからね!」
『おうよ』
『でも少し飽きてきた』
『長い』
『変化欲しい』
その気持ちはわかる。
けど協力して欲しい!
「あっ席に寄りましたよ!」
「ねえ
『女抱きたいから』
『金欲しいから』
『うんこ』
「エリカみたいな綺麗な女性に会うためかな」
『うわくっさその言葉』
『抱きたいって正直に言えよ短小野郎』
『いや理由はそれぞれあるだろうが』
『色んな事情を抱えた若者が多いんだぞ。夢に向かって頑張る人だっているし』
「見て見て短小って書かれてるよ? 史門って短小なの?」
「今見る?」
「キャーやだーっ!」
『そうだよ』
『見たけりゃ見せてやるよ』
『ボロンっ!』
『息子出してBANされろ』
『ポコチンポコチンポコチン』
やはり荒らしの連中が来るとコメント流れるのが早いな。
そのせいで僕たちのコメントはすぐ埋もれてしまう。
でもBANされるようなことはやめてほしい。
あと男のは見たくないです切実に。
『でもここに来れば素敵な男性に会えますね』
これは僕のコメントだ。
「だってさ。確かにA.CALLは他のクラブにいないイケメンが揃ってるよね~」
「みんなオーナーに拾われたから。社会の最底辺に生きるゴミくずみたいな人間なのに、オーナーは見捨てず育ててくれた。だから今がある」
僕の勝手なイメージだと、ホストはもっとテンション高くてイケイケな感じだと思ってた。
だけどここにいるホストはみんな落ち着いている。
おとなしいって意味じゃない。
苦労人だからこその雰囲気が漂っている気がする。
「今日で三ヶ月」
「え?」
「エリカに出会って三ヶ月なんだよ」
「えーそうだっけ忘れてた!」
「だからプレゼント。ウィトンのバッグ。欲しかったんだろ?」
「覚えててくれたの!? 待って惚れそうなんだけど!!」
『ええ男やん』
『幸せになりな』
『汚え金で買った偽物バッグやろこんなのwww』
『軽い女だな』
『誰にでも股開きそう』
『素直に祝えないアンチ、可哀想』
『お前だってチー牛だろwww』
「じゃあいっとく? ドンペリいっとく? 史門飲みたい?」
「ドンペリ入りまーす!」
その声を聞いた周囲のホストが集まりコールが始まる。
そして大事そうに抱えられたドンペリが席に置かれると、ホストはマイクを持って一言。
「エリカ。三ヶ月ありがとう。これからも特別な女性でいてほしい」
どっかんどっかん盛り上がる店内。
よし、まずは先勝だな!
『ねえアンチどんな気持ち?』
『え? こんなんで勝った感じなん? まだあかぼんが来てないのに???』
『もうすぐ本隊が合流するからやべーことになるよ』
『言ってろチー牛ども。お前らじゃ相手にならん』
確かにこれが続けば恐れることはない。
数が多いだけで力はスライム程度。
キン○スライムに化けるかもしれないけど、所詮は一の集まり。
一が増えても怖くない。
そう、十や百の存在が現れなければ……
さっきから妙な違和感だ。
閉店は四時。炎上させるとしてもスロースタートすぎる。
あかぼん……このままだと無事売上げクリアになるだろう。
どんな爆弾を持ってくるつもりなんだ?
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