第122話 ブリーフィング

 気がつけば十日目が終わりかけていた。


 なんだかんだあったけど明日がラスト。


 ログイン直後からいじめられたりしたけど、色んな配信者さんと話せて楽しかった。


 まさか僕がスト鯖に参加できると思わなかったけど、本当に貴重な経験をさせてもらったさ。


 でも、まだ終わりじゃない。


 僕には大仕事が残っている。


「ほんじょー。ナイトプールイベントで聞いたけど、ギャングはかなり劣勢だって。やっぱりポリスが強いってみんな言ってた」


 隣に座る並等さんはしょげた感じで呟いた。


「大丈夫。明日……というか今夜だけど、ポリスには一泡吹いてもらう。僕と並等さんが連携組めば誰が相手でも勝てる」


 最後まで付き合ってくれたスト鯖の相棒に僕は前向きな発言をする。


 そう。結果はほぼ決まっている。


 ポリスの大勝なのは不動の事実。


 でもね、終わる前に諦めるほど僕は人ができていない。


「そっか。じゃあ今日まで秘密にしてた作戦を教えてくれるかな?」


「任せなさい」


 僕は短く答えてからインベントリにしまっておいた一枚の紙を渡す。


「これを見てほしい。侵入経路はここ。この銀行不思議なもので窓が開けられるようになってるんだ。バイトくんがここの窓を空けてくれているから、僕らはここから侵入する」


「でもここって道路の正面だからNPCに通報されたりしないの?」


「そこがポイント。金庫は地下にあるんだけど、二階のこの窓から入れば地下に続く階段が近くにある。一番金庫へアクセスしやすい場所なんだ」


「そうじゃなくて正面だと見つからない?」


 ふっふっふっ。


 そこも確認済だよ。


「コレ見て。この銀行は塀で覆われていて完全に独立している感じだ。つまり隣の建物からジャンプして飛び移るってことはできない。でも僕たちは二階の窓に行く必要がある」


「つまり?」


「ここから侵入されることはない、って思っているであろう場所を選んだから、警備も人の目も薄い。要はこんなとこに注意を向けない」


「夜なら近づかないと見えないし大丈夫ってこと?」


「うん。そんなとこ」


「じゃあその窓にはどうやって行くの?」


「ここの警備は頑丈だ。夜はサーチライトが照らされ見つかった瞬間ガトリングで蜂の巣にされる」


「なんか矛盾してない?」


「最初から綺麗に忍びこむ事なんて考えてないよ。この作戦はバイトくんたちの協力のもと成り立つから」


「え、どゆこと?」


 並等さんは驚いた声音で話す。


「いい? 僕たちは三番目にアクションを起こす。斥候が近くで爆破事件を起こしポリスや警備の目を引く。同時に二番手が戦車(僕の資金で買った)で正面入り口に凸る。暴れてくれているうちに僕たちは用意していたハシゴで窓から侵入ってわけよ。つまり負荷の分散だね」


「それだと警備が厚くなるだけじゃ……」


「逆だよ。人手が足りないほど暴れてくれればいいだけさ。みんなも少なからずポリスにヘイト溜めてるし、活き活きしながら暴れると思うよ」


「……信用するからね」


「あぁ任せてよ!」


 僕は語気を強めて言い放つ。




 さぁ準備万端だ。



 しまっていこう。




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