第97話 脱出方法

 ここに捕らえられてから数十分経つ。


 相変わらず大人たちがギャーギャー騒ぎ事態は収まりそうにない。


「ねえほんじょー。どうやったらここから出れるの?」


 低い声で囁いたのは並等さん。


「釈放金払えば出れると思うよ」


「でも六百万なんて払えない」


「だから他のみんなみたいに交渉して安くして貰うんじゃん」


「うざその言い方。私ができないみたいに聞こえる」


 うん。


 そのつもりで言ったんだもん。


「これくらい余裕だから。見てて」


 おいおい。


 泣いて帰ってきそうだな。


「ねえポリスさん。こんなか弱い女の子閉じ込めて心痛めない?」


「女性人気ないから大丈夫」


「でも私を助ければモテモテになれるかも」


「マッチングアプリで懲りてるから大丈夫」


 ……なんか切ない。


「いちゃいちゃできるよ? おはようのチューも毎日できる」


「二次元で足りてる」


 強いなこのポリスの人。


 確かな信念を感じる。


 これじゃあ並等さんごときじゃ相手にならん。


「わかりました。ほんじょー、こっち来て」


 なんだよ。


「もの凄くぶん殴りたい。拳で」


「今のは相手が上手だよ」


「ほんじょーもあんな感じなの?」


 あんなって……


 失礼だな。


「知ーらない」


「もうどうすんのこれ」


 まぁまぁ落ち着こうよ。


 僕にだって策がある。


 だから静かにある人物を待ってるんだ。


「あれれ~動物園ですかこれ~」


 ……!


 このだるそうな声。


 来たな。


「おう数葉じゃねーか」


「おめえの顔は見たくねえ」


「嫌われちゃったな~って、ほんじょーいるじゃん」


「どうも」


「牢屋が好きなの? そういう性癖?」


「あははなんかの間違いです」


「ふーん。俺との約束は?」


 これだ。


「それがですね。モダさん逃げちゃったのでどこにいるかわかりません」


「それじゃあ契約違反だな~」


「そこでお話があります。僕はモダさんを見つけに行くのでここを出して下さい」


「信じると思う? その提案」


 これには二つに意味を含む。モダさんを見つけに行くこと。


 お金を集めて並等さんを助けること。


 並等さんにこの内容を話せば間違いなく失敗すると思ったから黙っていた。


「ギャングの情報はある程度集めました」


「……まぁほんじょーなら上手くやるか。いいよ出してあげる」


 数葉さんは「その代わり」と言葉を続ける。


「ギャングが暴れ回ったからポリス陣営の装備が乏しい。探索者のモダさん見つけたら街の外にあるエリアで怪しい草を集めて違法取引して金稼いで欲しいんだよね」


「少しは貰いますよ」


「いいよ三割あげる」


「交渉成立です」


「ねえコソコソ話して何してんの?」


「並等さん。僕はアルバイトしてきます。とびっきりの……ね」


「きも」





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