第23話 覚悟
『ほんじょー様お待たせいたしました。通話の準備が出来ましたので、ただいまより始めさせて頂きます』
サブモニターでメッセージを確認し僕はヘッドセットを装着する。
そしてコール音が鳴る。
大きく深呼吸してから通話に上がった。
「はい。ほんじょーです」
「わしだ」
数回しか聞いてないけど低く力強い声。
もちろん相手は知っている。
てか、いきなりラスボス登場か。
「お久しぶりですあの時はお世話になりました」
「ふん、若造がいっちょ前の言葉を使いおって」
まあコレしか言えないけど。
ビジネス的な言葉はまるでわからないし。
「イベントは見ていたんですか?」
「少しだけな」
「どうでしたかみずきさんは?」
「多少は気持ちを入れ替えたようだが、まあこれからよ」
僕からするとみずきさんはかなり変わった。
「そう……ですか」
確かにその場にいないと分からないかも知れない。
「して小僧よ。わしが来た理由はわかるな?」
「はい。さつきさんから聞いています」
「よかろう。貴様の契約についてだが、みずきを改心させ優勝することが条件だった。しかし結果は三位。これは達成していないな」
「あの、聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「どうしてみずきさんを改心させようと僕に依頼したんですか?」
「細かいことは知らん。みずきがお主を推薦していたから遊び心でそうしただけだ。いずれにせよみずきには向上心がなく、メンバーが傍にいないと話すことが出来なくなる。要は人見知りなんだが、最近は悪化しおってコラボもなくなったと聞いた。かのイベントでも喋ることが少なく配信をする身として死にかけていたからな」
「え、でも普通に話してましたよ?」
「それを聞いてお主を抜擢しただけだ。あのみずきが見知らぬ男性配信者をベタ褒めしてたからな。みずきが改心しなければ自然に消えるか、炎上して居場所を失うかの二択だと会社は判断した。だが、そうなっては困る。若い女の子を預かる立場として、活躍の場を奪うことはわしが断じて許さなかった」
実力が全てだガハハ! って印象だったけど、すげー良い人じゃん。
「みずきの改心が条件に含まれていたが、これは見事達成したと判断しよう。以上を踏まえて一勝一敗。何か言いたいことがあれば聞こう」
「あの、僕の中で答えが出てまして……」
「申せ」
「仮に合格だったとしても、僕はAmaterasuに入りません」
「……その心は?」
「僕はハイエナのような存在でいいんです。おいしい出来事が転がってたら食いつくだけで充分なんです。Amaterasuの一員になったとしても活躍出来る保証はありませんし、僕は好きな時に起きて好きな時間に配信始めて、好きな相手とコラボしたいです。やれと言われても素直に聞きません。だって僕は社会不適合者ですから」
「ガハハハハハ! 生意気なことを言いよる」
「僕は誰かに言われてやるのは嫌いです。理不尽に耐えることも出来ません。今のスタイルはそうして作り上げました。だから会社員はやりません」
「貴様のような鼻息荒いクソガキを探していたところだ。今の子は自分の意見を持たず他人に流され人形のように生きている。その中でも貴様は明確な意思を持って行動し結果を残してきた。今以上の活躍を望まないか?」
「自分で決め、自分で行動します」
「本心か?」
「はい」
「後悔しないか?」
「しません」
僕って知名度が上がったから態度がデカくなったのかな? 偉い人に好き勝手言ってるし。
それとも、人並みに話せるようになったのかな?
みんなはこれくらい普通なの?
僕にはわからない。
「貴様を採用する気でいたんだがな……まあいい。その覚悟しかと受け取った。わしに断りを入れたこと、後悔ないよう精進せよ」
「もっと頑張ります」
「歳はいくつだ?」
「十九です」
「ふんっ……惜しい人材だ。では失礼する」
「はい。ありがとうございました」
ポン! と効果音が鳴り通話が閉じた。
ふえええええええ緊張したああああああ!
手汗すごい! なんか身体がポカポカする!
でもこれで良かった。
どこにも属さないから炎上擁護が活きる。
だから明日も配信頑張ろう。
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