第99話 僕は思い出にはならない。
「さてと、我が舞い戻ってきましたよ」
『こん』
『夕飯何食ったん?』
「はいこんばんは。今日のご飯はスパゲッチイでした」
『パスタって言えよ田舎もん』
『これだから新潟の田舎もんは……』
『ほんじょーと飯言ったら恥かきそう』
なんでその程度で罵倒されるの?
スパゲッティに親56されたの?
「みなさんはどうせコンビニ弁当とかカップ麺でしょ」
『残念。牛丼』
『女の子と洒落たレストラン行ったわ』
『夢の中でだろ? 強がるなって』
『お前ら酒焼けした声で注文してるんやろ?』
「まぁ僕はとっても可愛い女の子とご飯行きましたけどね」
『おい。こいつを潰せ』
『末代まで許すな』
『血を血で洗う争いする?』
『なんか態度違くない?』
「ふっふっふっ。僕は目覚めました」
『男の趣味に目覚めたんやろ』
『まるで野獣の眼光だ』
『真夏の夜の……』
『おいやめとけ』
「いいですかみなさん。普段の僕は控えめでクールな男子です。しかしここはスト鯖。自分らしさ全開でやらないと生き残れません」
『自分らしさ、とは』
『ムリすんなって』
『つまりどういうことだ』
「とにかく暴れ回ります。やべーヤツって思われてもいいです」
『ふざけるのとキャラに合わないことをするのは違うぞ』
『でもそんなほんじょーも見てみたい』
『ええやん。暴れようや』
「今日から僕はスーパーほんじょーです。戦闘力は五十四万ですから」
そう。
僕はただこのゲームをしている。
他の配信者さんは笑いの渦を起こしてみんなを巻き込んでいる。
僕もその渦の中心にいたい。
「と言うわけで早速やっていきますか。まずはモダさんと合流して怪しい草を摘みに行きましょう」
今いるのは署の近くにある路地。
まずはモダさんにメッセージだ。
「とりあえず合流しましょうって送りました。たぶんアルバイトは時間がかかると思うので水分を補給しておきます」
そう言ってメインストリートに飛び出す僕。
夜だからちょっと雰囲気あるな。
「モダさんはどこかな……ぐへえ!」
え、なに!?
『轢かれてて草』
『あれNPCじゃないな』
「くっそ~誰だよあんな乱暴運転するヤツは~」
「あっケガしたね! 私が治すから!」
「えっ誰……」
「メディックの結城ここで~す! はいそこに座って」
確かVの人だったな。
「いやこれくらいなら大丈夫ですよ」
「ダメダメ重傷だね。はい、これくらい払えれば治すよ」
「百万!? そんな法外な!」
「お願いお金が欲しいの! ホ別で百二十でどう??」
「じゃあリアルの方でお願いします」
「きっしょ。図に乗んな」
言葉強くない?
誘ったのあなたでしょ。
「おいおいナンパか兄ちゃん!」
「はーい取り締まりまーす!」
「何もしてないですよ! 僕は何も!」
「犯人はみんなそう言うんだ」
「ほら、怖がってるじゃん」
「あーん犯されたー!」
またこのパターン?
「お前見たところギャングだな。こんな夜中にどこに行くって言うんだ?」
「えーっと、お花を摘みに」
「なんの花だ?」
「薔薇です」
「薔薇なんて咲いてないぞ」
「だから見つけに行くんです」
こんなところで捕まってたまるか!
「騙そうたってムダだぜ」
「ほら正直に言えよ」
「あーっ! あそこにボインなお姉ちゃんが!」
「なに!? どこだ!」
今だ!
「あっ待てこの野郎!」
NPCから車を奪って……
「待てこの野郎ー! ほんじょーだったな、覚えてろ!」
引っかかったな。
これぞお色気の術だ。
「さ~て街の外に行きますか」
BGMも流してノリノリだぜ。
モダさんからの返事は……ないか。
もしかしてお仕事中かな。
なら僕は安全を確保しよう。
署の近くはポリスが多くて困る。
……って、なんで検問してるんだよ!!
「止まりなさーい!」
パトカーでバリケード作ってるな。
一体誰がこんな事態起こしたんだ。
どうする引き返すか?
――否。
我はギャングなり。
突っ込もう。
「おい突っ込んでくるぞ!」
「うおおおおおおおお!」
パトカーの横っ腹に一発。
強引だけど道が開いた!
「えー署の西側バリケード、何者かが突っ込んできて突破されました!」
そんな声が聞こえるも我は振り返らず。
ふふふ……これぞスト鯖。
この調子で生き抜いてやるぜ!
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