第3話 ファンの本心
「ほんじょーの配信はあくまでもスタンダードであり、ちゃんとルールを守っていることをお約束します! ということで、みなさんこんばんは。今回は昨夜タレコミのあった藤井ユイについて話します。ただし今日はスペシャルゲスト……ってわけじゃないけど、藤井リスナーとしてデビュー当時から推している『ケイタ』さんに来てもらいました!」
「はーい……こういうの初めてなんで緊張しますね……」
「ケイタさんは一般の方なので名指しの
ふふ。予想通り。
いつもは僕一人で話すから直接のファンが来たことでコメント欄は盛り上がってるな。
SNSで煽り文章書いといたからきっと同接は――
うーん、七十人か。
まぁスタートはこんなもんだろう。熱が上がってくれば百人、いや二百人期待したい。
「今日はケイタさんに
「あっはい。一部ファンとの疑惑は今に始まったことじゃないんです」
「えっ前から噂になってたんですか?」
「はい。二ヶ月……くらい前から俺たち古参の間で話し合っていました。でもユイちゃんは若い子だし変なこと書いて配信頻度が落ちるのが怖くて……」
「なるほど。その疑惑の発端はなんですか? SNSでリプ返すくらいだと、僕でもやってることです」
「ユイちゃんは良くも悪くもフラットに接してくれます。古参だから、初見だから……これは一切関係ないです。でも『アンノウン』というIDのリスナーにだけ、一言二言多いんですよね。互いの素性を知ってるような素振りを見せるもんだから、リア友かと思ってたんです。でも……」
「でも?」
「SNSや配信で
「確かに身バレに繋がることはしてほしくないですもんね。女の子なら尚更です」
「はい。俺たちはもどかしい思いをしながら過ごしてました。そして、昨日の炎上が起きました。これにもアンノウンが絡んでいて、クリスマスのイベント後にユイちゃんは小さなイベントに出席していたのです。もちろんファンに明かしていませんし、そこには関係者だけだったと聞いています。それなのにアンノウンはモニターに映るユイちゃんを撮影して、SNSに投稿しました。これが配信中に起きたので大荒れ……」
『そういうことだったんか』
『その部分だけを聞いたら関係者なんかなって思う。マネージャーじゃないの?』
『個人Vだから親とか?』
『男を呼んでたのかなぁ……まだ若いって聞くし、若気の至りで許してあげようよ』
「どうですかコメント欄の反応は?」
「大手事務所のVTuberは配信に男の声が入っただけで炎上したし、やはり女性Vに男の匂いは御法度だと思ってます。俺は応援してるから叩くことはしないけど、事実を話してもらいたいですね……」
「ファンとして否定したい気持ちはわかります。しかし、事実を認めた場合ケイタさんはどうなるのでしょう?」
「……考えたくもありません。ユイちゃんの飾らない姿勢、丁寧な言葉遣いだけど興奮したら感情や意見をストレートに表現するところ、そのギャップが可愛らしくてみんな見ています。もしそうなったら、またここで思いを吐いていいですか?」
『俺たちはケイタの仲間だぜ!』
『ほんじょーリスナーになりな! ここはストレスフリーでつい配信を覗きたくなるほど、居心地が良いんだぜ!』
『とりあえず今は好きなこと話してスッキリしな!』
『ユイちゃんのスリーサイズきぼんぬ』
「僕のリスナーは歓迎の準備が出来ているみたいです。それでは藤井ユイさんの、これまでの活動を振り返りましょう――」
▽ ▽ ▽
配信を始めて二時間が経過した。
徐々に藤井ファンが増えてすっかり大盛り上がり。
同接は百五十人でこれにはニッコリ。
さて、眠くなったし終わらせるか。
「それではケイタさんとその仲間たちのみなさん。お別れの時間が来てしまいました」
「あぁ、もうこんな時間か。すみません興奮して話しすぎて……」
「いやいや楽しかったです! 最後に言うことありますか?」
「いえ全部吐き出しました! なんだか良い気分だな……」
「藤井ユイさんについては、情報が出しだい
言いかけたとき、あるコメントが視界に映った。
『どうせなら、炎上した本人呼んでほんじょーと配信したらいいのに』
「いやいや。僕みたいな底辺にそんなこと出来るわけないよ」
『でもほんじょーの配信が行き着くところってそれでしょ?』
『炎上を扱う配信者なら大げさなこと言っても面白いよ!』
『炎上=ほんじょーとコラボって流れが出来たらクッソ楽しそう』
「いやいや勝手言い過ぎだよ。じゃ、じゃあなんか言っちゃうよ? いいの?」
『おっ!!』
『たまには男見せろ!』
『バカッターしたヤツに俺のところで雇うとか言ってやれ!』
「藤井……藤井ユイ。もし、君が誤解を解きやり直したいと思ったら、僕に連絡してくれ。ほんじょーの配信はあくまでもスタンダード! 君に約束する!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます