第103話 支配権争い

 二日目。


 深夜まで頑張っていたからお昼に起きちゃった。


 お母さんに怒られちゃう。



「いよーし二日目ですね。今日もブイブイ言わせちゃいますよ」


 僕はあくびをしながら配信を開始させていた。


『やあ』

『初日から大盛り上がりだな』

『見たい配信者ばかりだから寝る時間がない』

『わかる』


「あ、そういえばみなさん見ました運営のコメント」


『知らん』

『え、なに?』

『更に盛り上がりそうなイベントだよね』


「そうなんです。初日は各々好き勝手やってよくて、二日目から役職に別れて支配権争いするんですよ」


 これは出演者だけに伝えられていたこと。


 初日は前夜祭みたいなものでみんなが好き勝手やってた。


 でも好き勝手やるだけだとドラマが生まれづらいし、役職に別れた意味も薄くなる。


 だから、二日目から街の支配権争いが始まるんだ。


「ざっくり言うと、役職毎にやることってあるじゃないですか。ポリスは治安維持、ギャングは犯罪行為、探索者は冒険とか」


『ほう』

『それがなんだと言うんだ?』


「ただそれをやるだけだと薄味になるかもってことで、街の支配権を争うイベントが追加されるんです。例えばポリスが街の治安維持に貢献したら市民から賞賛されて支配率が上がります。逆にギャングがポリスを欺き犯罪をしまくればギャングとしての名が売れるのでそれはそれで支配率に影響されます」


『おお面白そう』

『確かにそれなら役職に別れた意味がある』


「んで、探索者はまだ見ぬ世界や未知のアイテムを見つけることで地位向上し支配率が上がります。まぁ支配率というか影響力ですかね? これをやっていくんですよ。僕はギャングなんで探索者の人が見つけたアイテムを奪えば僕たちの支配率が上がりますし、結構奥が深そうなんですよね」


『面白そうやん』

『こういう目的があって笑いが生まれるのいいよね』

『そしたらほんじょーは何するんや?』


「僕はギャングの仲間と合流します。それから先はまだわかんないです」


『でもバイトどうするん?』

『並等は?』


「初日に捕まっていた人はいったん釈放されます。大事なのが初日の行動も既に加味されているので、たぶんポリスが優勢ですね。バイトはやりますよ」


『モダさんとバイトしながら最後にアイテム奪えばギャングの手柄か』

『策士がここにいたわ』

『でもそういうことだよな』


「そうですよ。まだ連絡来ないですけど、これからは互いに敵なんで警戒しないといけませんね」


 そう告げたタイミングに合わせて、ゲームのロードが終わる。


「今日もゴミ箱からこんにちはですね。さってと、ギャングは召集命令がかかってるので移動しますわ」


 狭い路地を抜けて大通りに出る。


 お昼だから配信者は少ないみたい。


 集合場所は……南のスラム街か。


 まずはNPCから車を奪って……


「――死にさらせほんじょ――――!」


「ぐはぁ!」


 いきなりドロップキックかまされたぞ?! まさかポリス!?


「へへーん捕まえたんだから」


「な、並等さん!」


「ほんじょーには話したいことがたくさんあるけど、まずは死んで詫びなさい!」


「待って! 署が近いから金属バットはまずいよ!」


「うるさいわボケ! なんで私を一人にしたの!」


「あれは……」


「なに!」


 縦振りされたバットを横のステップでかわす。


「作戦があったんだよ! 並等さんも助ける気でいたし!」


「リスナーからほんじょーは女王様プレイに勤しんでたって聞いてるけど!」


 今度は横降りをしゃがんでいなす。


「不可抗力! 違うから!」


「黙りなさい! きええええええええ!」


 遂にバットが僕の脳天をとらえた。


「待ってほんとにやめて! やばいってマジで!」


「ギャングは招集がかかってるんでしょ? 裏切り者として連れて行くから」


 並等さんはNPCの車を奪うと僕をトランクに詰め込んだ。


「あーーーポリス助けてーーーー! ここに犯罪者がいまーーーす!」


「ふん、ウジ虫野郎が。そこでいい子にしてなさい」


 二日目の初っぱなからヤバそうです。




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