その66、縁起を担ごう(3)

 これが――百円の力。

 牧野に引っ張られながら、手のぬくもりに痛いほどどきどきする。

 実のところ、すでにお参りは済ませている。百円。なかなかの投資だ。

 そしたらひょっこり牧野がやって来た。そして、いま手を繋いでいる――

 と、そのぬくもりが離れた。小気味よく鳴り響く鈴。

 財布を取り出す彼女の横で、慌てて俺も財布を開ける。中には惨状が広がっていた。この間の昆虫大事典は痛かった。

 でも。でも、だぞ?

 百円であれだけご利益があったのだ。さらに追加したらどうなってしまうのか。

 ……大体、友だちになったはずなのに全然話す機会もないのだ。友だちとは一体。

 牧野の賽銭が乾いた音を立てた。

 ええい、ままよ。俺は白銅硬貨を引っ掴んだ。

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