その37、悔いた赤鬼(承前)

 ――どういう状況だ。

 赤鬼は立ち尽くしていた。

 なまはげに鬼の形相で追われ、狭い路地に身を隠してようやく逃げ切ったと思った矢先。

 わらわら湧いてきた大量のおっさんに囲まれた。

 呆然とする赤鬼に、おっさんの一人が言う。

「俺たちは『娘にぞっ懇親会』さ」

 混乱が深刻化した。

「だからぞっこんと懇親会の『こん』をかけてだな」

「今その話はいいだろ」

 別のおっさんがたしなめる。

「さて」

 咳払い一つ。

「娘を可愛いと思う気持ちは分からんでもない。ただ、君のそれは歪んでいる。ちゃんと矯正しないとな」

 にっと笑みが浮かぶ。

「さあ赤鬼君、道徳の時間だ」

 路地に充満するおっさんいきれの中、赤鬼は思った。

 生きて帰れたら、真っ当に生きよう。

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