その129、校内放送(4)

 モンちゃんとピータンがひょっとこ怪人の話で盛り上がる中、俺は針のむしろだった。

 あの日のことはあまり思い出したくない。勝手に誤解して、牧野の前で恋の手ほどきを受けて、恥ずかしい台詞を吐いて――黒歴史確定だろう。

 ――一回でうまくいくわけないでしょ。

 姉の言葉がよぎる。だとしても、ひょっとこ怪人とか秘密結社とか、山も谷もありすぎだろう。もはや連峰だ。ピレネー山脈だ。

「どしたん、カッコー?」

 口数少ない俺に、ピータンが声をかけてくる。

「まさか、ひょっとこの呪い?」

 うん、ある意味。

「これはお祓いしないと」

「ショーシ、コーレーカ―、ダケデショ」

 笑いながらおまじないを唱える二人。

 ……早く、噂消えてくれないかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る