その130、別荘に行こう(1)

「そうだ、山へ行こう」

 GW前日。突拍子もない父の言葉に、いつものことだと私も母もスルーしていたのだけど。

「別荘があるんだ」

 初耳なのだが。母も首を傾げている。

 聞けば、例の結社の保養施設として、地元の名士が提供してくれているのだという。

 ……あの組織、そんなに大きくなってるの? というか、もはや秘密にする気すらないな。

「夏には大交流会も予定されてるし、あとは子どもにいたずらしようとする輩を短期集中矯正する時に使ったり」

 なにそれ怖い。

 翌日。ろくでもないイメージを引きずったまま、車に揺られること三時間。

「わあ」

 私は思わず声をあげた。

 森を抜けた先に見えたのは、お伽話の中から出てきたような、瀟洒な洋館だった。

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