その50、それぞれのホワイトデー(2)

「お返ししないとか、死刑だ死刑」

 姉がリボン付き小箱を鼻先に突き付けてきた。

 そっと時計に目を遣る。説教が始まって三十分。正座した足も限界だ。

「だから、そのチョコはお礼なんだって」

「そんな問題じゃない!」

 どんと机を叩く姉。

「女に何かもらったら死んでもお返しをする。それが男ってもんだろ」

 そんな無茶苦茶な。

「それがモテる男の最低条件。あとは顔と性格がよくて料理がうまくて貴族で――」

 どこの完璧超人だ。埒が明かないと、俺は最後の抵抗を試みた。

「何か秘密結社が暗躍してるらしいし」

「……あ、なるほど」

 え、納得した? 秘密結社って実在するの?

 少し考えた後、姉はにっと笑った。

「いい考えがある」

 ……悪い予感しかない。

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