その51、それぞれのホワイトデー(3)

「いたか?」

「見失った!」

 足音が遠ざかったのを確認し、俺は路地から顔を出した。

「何だよ、これ」

 ――要は、身元がばれなきゃいいんでしょ。

 姉の言葉を思い出す。二人ともお面を被って受け渡しをすればいい――それが彼女の作戦だった。 

 ――仮装舞踏会みたいで盛り上がるでしょ。

 どころか現状、それ以上に危険な盛り上がりを見せている。仮面をつけた俺を見て、おっさんたちが血相を変えて追いかけてきたのだ。

「あれが秘密結社……でも何で」

 こちらの目的がばれてる? どうして? そもそもお返しするだけなのに、なぜこんなに苦労をしなければならないのか。

 とにかく、顔バレだけは避けねば。しっかりと鬼の面をつけ、俺は路地から駆け出した。

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