その52、それぞれのホワイトデー(4)

『お面をつけて公園に来てくれ』

 待ち合わせ時間を告げ、電話は一方的に切れた。受話器を持ったまましばし呆然とする。

 ここ最近聞いた中で一番クレイジーな言葉だった。意味がまるで分からない。

 ともあれ、わざわざ履行する必要はないだろう。明日、学校で真意を正せばそれで済む。

 ただ、カッコーの怯え切った声が気に掛かる。まるで今にも猛獣か何かに襲われそうな――

 そんなわけで、私は公園のベンチに座っている。

 もちろん、お面はつけず手提げの中だ。さすがにお面姿で町中を出歩くのは恥ずかしすぎる。

 3月の公園は存外に暖かかった。敷地の外ではおじさんたちが何人も走っては消えていく。ジョギングだろう。春だな。

 私は大きく伸びをした。

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