その53、それぞれのホワイトデー(5)
何の冗談だ、と思った。
いや、冗談にしてもタチが悪い。
ふらつく足取りで私の傍まで来ると、小鬼は息も絶え絶えに言った。
「何でお面被ってないんだよ」
いや、逆に何でお面つけてんの? しかも、鬼の。
節分の時のことをからかっている? どこで聞いたのか知らないけど、もしそうなら笑って済ますわけにはいかない。
「どういうこと?」
私の硬い声に、カッコーがびくり肩を震わせた。
「いや、何で怒ってんだよ。ここに来るのにどんだけ苦労したと――」
「おい」
遠くから低い声が、カッコーの言葉を遮った。いつか聞いた、地獄の底から響いてくるような声。
振り向くと、公園の入り口に本物の鬼――もとい、鬼の形相で父が立っていた。
「娘から離れろ」
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