その123、迎えに行こう(2)

「おお、我が娘。よくぞ迎えに来てくれた」

 本屋の入り口で父が諸手を広げた。背後では自動ドアが閉まっていいものかどうか困っている。

「さあ、この胸に飛び込んで――」

「そこ、出入口だから邪魔になるよ」

「あ、はい」

 すごすごと横に退く父。直後に店から出てきたお客さんがくすくす笑っている。

「はい、これ」

 ビニール傘を渡そうとすると、父は私の傘を指差した。

「傘は一本で充分。相合――」

「断る」

 強引に傘を押し付ける。無念そうに手元を見つめ、父が言った。

「もし、これ折れたらどうする?」

「もし折ったら置いていくから」

「ちっ」

 ……本気で折る気だったのか。というか舌打ちやめれ。

 不承不承、傘を開く父。雨の中、傘が二つ並んだ。

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