その111、買い物に行こう(5)

「えっと……」

 反応に困り、とりあえず率直な疑問を返す。

「なんで?」

「え?」

 カッコーの顔に困惑が浮かぶ。いや、困惑しているのはこっちなんだけど。 

「……ここは俺が払うから」

「だからなんで」

「いいねえ」

 押し問答していると、唐突にレジのおばさんが口を挟んできた。

「うんうん、青春だね。あたしも若い頃はそりゃもう……」

 何か語り出した。

 面食らっていると、その隙にカッコーが財布からお札を取り出した。慌ててその手を止める。再び始まる押し問答。と、

「少年よ」

 カッコーの肩がぽんと叩かれた。振り返ると、後ろに並んでいたおじいさんが柔らかく微笑んでいる。

「焦りは禁物じゃぞ。千里の道も一歩から、じゃ」

 ……本当になんなん?

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