その112、買い物に行こう(6)
「押し付けがましい好意は迷惑以外の何物でもない」
渋い声で老人が語り始める。
「相手が何を望んで、そして何を嫌がるのか。まずは相手を知ることからじゃ」
滔々と続く語りに、呆然と立ち尽くす。どうして――
「そのために多くの時間をともに過ごし、理解し受け入れ合う関係を築く。それこそが重要なのじゃ」
どうして牧野の目の前で恋の手ほどきを受けなくてはならないのか。これ何て拷問? 周囲からの視線が痛い。
「少年よ」
肩の手に力が込もる。老人がにっと笑った。
「何事も経験。がんばるんじゃぞ」
どうやら針のむしろから解放されたようだ。けれど安堵は束の間、隣に並ぶ彼女の存在を痛いほど感じつつ、天を仰ぐ。
……このあと、どうしよう。
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