その110、買い物に行こう(4)
それはさながら作業だった。
黙々と食材を選ぶ牧野に、黙々とカゴを構える俺。盛り上がりのひとつもない。
カゴの中のレタスを見つめる。ここはひとつ、華麗に豆知識でも披露すべきなんじゃないか? レタスに潜んでいそうな虫とか列挙すべきではないのか?
けれど結局、トークらしいトークもないままレジへ。焦りで胸が熱くなる。
「二千五百二円です」
「あ」
レジ打ちのおばちゃんの声に、思わず声をあげる。姉のとあるアドバイスを思い出したのだ。窮地からの一発逆転が可能な、決め台詞――
もちろん全面的に信じたわけではない。けれど、このまま終わるわけにはいかない。
牧野を見る。けげんな顔の彼女に、俺は決然と言った。
「ここは俺が払うから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます