その125、迎えに行こう(4)

 ぴょんと白線から降りる。記録は1秒。けれどそれで十分だ。

「私の勝ち!」

「く、これは八百長だ! イカサマだ! タコサマだ!」

 いや、八百長も何も……タコサマ?

「断固として再戦を要求する。もしくは相合傘」

 しれっと願望をねじ込むな。

 ため息をつく。よく考えると、家まではもう5分ほど。雨のおかげで人目もないし……まあ、いっか――

 と、そこでようやく気がついた。

「雨、やんでる」

「なん……だと……」

 空を見上げる父。つられて顔をあげ、思わず目を細める。雲間から零れる、柔らかな光。

「あ」

 声をあげる。頭上に、大きな虹がかかっていた。傘を畳んで、しばし見とれる。

「……ラッキーだな」

「ね」

 虹の下ふたり、足取り軽く歩き出した。

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