その135、別荘に行こう(6)

 天国はここだった。

 次々と供される料理を一心に平らげる三人。

 時にソースの残ったお皿を前に、苦悩。……なめてしまいたい。でも、それはさすがに。

 隣では父も打ち震えている。くう、気持ちは分かる。

「……たしか、マナーは気にしなくていいって言ってたよな?」

 ちょっと待て。

 と、二人の目の前にパン籠が置かれた。

「これにつけると美味しいですよ」

「と、時田さん!」

 目を輝かせ二人、競って手を伸ばす。

 デザートはバニラフロート。フロートと一緒に舌が溶けていく。舌がとろける、の本当の意味を知った。

 食後、部屋に戻りベッドにダイブ。お腹に満ちた幸せにまどろむ。今日はいい日だった――

 耳に、テラスから声が届いた。

「星がきれいだぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る