その134、別荘に行こう(5)

 大テーブルにマホガニーの椅子(父の談)、燭台に揺れる火。雰囲気に圧倒され、思わず隣の父に聞いた。

「ねえ、フォークとナイフって外側からとるんだっけ?」

 返事がない。見ると、石像のように固まっていた。

「え、だいじょうぶ?」

「……RGRBRだ。その順番でとるんだ」

 だいぶ混乱している。

「それたぶん関係ないよ」

「ナイフは右手、フォークは左手……お箸をもつ手が右でジャブを打つのが左」

 物騒なことを言い出した。調度は詳しいのにマナーはからきしらしい。仕方なく母に尋ねようとしたところで、時田さんが入って来た。すっと目の前に置かれる、一膳の箸。

「マナーなどお気になさらずに」

 時田さんは茶目っ気たっぷりにウィンクした。

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