その136、別荘に行こう(7)
狸寝入りしようかと思った。それだけ心地よいまどろみだった。
けれど、やっぱり星は気になる。ここは奥深い森の中。きっときれいな星空が広がっている。
心を決めて、ベッドから身体を引き剥がす。う、きつい。
のそりテラスへ歩きかけ、床にハンドバッグが落ちているのに気づいた。父のものだ。中からは一冊の本が覗いている。
「あ」
声をあげた。
『一冊でわかる西洋インテリア』
雨の日の記憶が鮮明に思い起こされる。なるほどこれで予習していたのか、詳しいわけである。
母を見ると、素知らぬ顔で本を読んでいる。
そっと本をバッグの奥に押し込む。うん、私も何も見ていない。これも武士の情け。
バッグをチェストボードに戻し、私はテラスへ出た。
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