その137、別荘に行こう(8)

「きれい」

 ほかに言葉が出なかった。見上げた夜空は、どこまでも星でいっぱいだった。

「なにか星座ってある?」

「もちろん」

 父が正面を指差す。

「あれがしし座」

 その言葉に、心臓がとくんと跳ねた。

「一等星のレグルスから始まって――」

 父の指先で繋がっていく星たち。

「……しし座って夏じゃないの?」

「見頃は春」

 今日イチのどや顔を向けてくる父。ほかの星座は?――そう聞こうとして、やめた。どうせ星座なんて予習してないだろうから。でも、しし座だけは分かってくれてた。だって――

 テラスからの戻り際、もう一度見上げる。

 夜空に寝そべる獅子。8月10日生まれの、あれが私の星座なんだ。

 瞬く星をしばし眺め、やがて私は部屋へ戻った。

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