その138、別荘に行こう(9)

 目を開けると、視界いっぱいに白が広がった。掃き出し窓からの光は清冽で、天井はますます高かった。

 身体を起こしてようやく気がつく。保養所の一室だと。そして――鳥のさえずり。囁くような、奏でるような。いつもはカラスかスズメの鳴き声しかしない朝は、けれど今日は色とりどりの声に満ち満ちていた。

 なんだか、どきどきした。

 ふいにカーテンがそよぐ。テラスに父の背が見えた。

「おはよ」

「おう、おはよう」

 テラスに出て、大きく伸びをする。漂う濃密な緑の匂いは、なぜか近所のお寺を思い出させた。

 父がにっと笑う。

「なんか、寺って感じの匂いするよな」

 ……むう、同じ感想。照れくさくなって、返事はしなかった。

 ――2日目が、始まる。

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