その151、授業参観を受けよう(4)

 さながら映画のワンシーンだった。敵地に乗り込む主人公たち、みたいな。

 違うのは、目の前の団体には世界を救うという使命もないし選ばれし宿命もないし、もっと言えば小学校の校庭だし。

 と、ひとりが進み出て、居並ぶ父親集団を振り返った。ミカパパだった。目を伏せるミカちゃん。ドンマイ。

「宣誓!」

 ミカパパがぴっと右手を掲げる。

「ひとつ。参観場所は譲り合いの精神で!」

「譲り合いの精神で!」

「ふたつ。参観中は騒がず静かに!」

「騒がず静かに!」

 何これ。

 次々と復唱されていく宣誓事項。……全部当たり前のことでは? というか、そういうのは人目につかない山奥とかでやってくれないかな。

「待ってくれ!」

 不意に、悲痛な声が響いた。

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