その87、クイズをしよう(3)

 先攻は父。

「ピザって10回言ってみて」

 ……いきなり意味が分からない。けれどやたら急かされ、仕方なく従う。

「ピザピザピザ……」

 言い終えると、だしぬけに父が自分の身体を指差した。

「じゃあ、ここは?」

 即答しかけた瞬間、脳内にアラームが鳴り響く。違う、あれは膝じゃない、肘だ――刹那のうち、力づくで回答を修正した。

「ぴじ」

 わずかな空白の後、おもむろに頭を抱える。

 火を噴いたように顔が熱い。なんだこれ――悔しいよりなにより、恥ずかしい。屈辱すぎる。

「え、今なんて?」

 定評ある父の煽り。ぐぬぬ、これが我が子に対する仕打ちか?

 ――絶対に負けたくない。

 私は顔を上げた。こんな詐欺まがいの手口に屈するわけにはいかない。

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