その72、空と君との間には(1)

 高い空。

 不安をよそに、新学期初日は最高の朝だった。

「ミカちゃんとは同じクラスになれるといいな」

 父の言葉に頷く。「ミカちゃん『とは』」――言外にカッコーは許さんと言っているのだが、素知らぬ顔をしておいた。

 家の前にはミカちゃんが待っていた。他愛ない――当たり障りない話をしながら歩く。通い慣れた、いつもの道。

 しばらくして、彼女が立ち止まった。

「あのさ、もしさ……」

 言葉が途切れる。けれど何を言いたいのか分かったし、だから私も胸が痛くなった。

 その手を、私は握った。

「きっと、だいじょうぶだよ」

 何があっても――例え、クラスが別々になっても。

 手が握り返される。

「うん」

 二人、笑い合った。

 学校はもう、すぐそこだ。

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