その71、縁起を担ごう(8)

「あー」

 何度目かの呻き声をあげ、スマホを机に放る。

 LINEを交換できたのは晴天の霹靂だった。御利益としては破格だろう。けど、卵を割ってしまったのも事実であって。素直に喜べないというか。

 あの後、またバッグを持つとも言えなかった。落としておいて、さすがに。だけど、それもどうなのだろう?

「あー」

 ピコーン。

 着信音に、思わず飛び上がった。どころか喉元から心臓がせり出しかけた。

 牧野からだ。おっかなびっくり、タップする。

『ありがと♪』

 続いて、いなり寿司の写真。

 ……ありがと? なぜ? いやまてこれドッキリじゃ? 

 芋づる式に膨らんでいく疑念。

「ああ、もういいや!」

 えいやとばかり俺は返信を打った。

『明日からもよろしく』 

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