その83、空と君との間には(12)

 どんより気分で自由帳を開く。

 気持ちがごちゃごちゃしたら状況を書き出してみるといい――いつか聞いた、姉唯一のまともなアドバイスだ。

 ページにはぎっしり昆虫の絵。そうだ、あいつらにも言い訳しないと。心が折れそうになるのをぐっとこらえ、鉛筆を走らせる。

『はげましてくれた牧野に逆ギレして気まずくてにげて牧野に謝らせた』

 速攻で破り捨てた後、ベッドに倒れ込んでもだえた。何の罰ゲームだこれ。ここにいない姉に毒づく。

 そう、悪いのはこっちだ。それは分かってる。だけど。

 ――こっちの気も知らないで。

 と、境内での一部始終を思い出して、またもだえる。

 ――やっぱり俺、好き、なんだよな?

 言えなかった言葉に、胸がちくり疼いた。

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