その82、空と君との間には(11)

 家へ帰ると、待ちかねたように父が聞いてきた。

「どうだった?」

 うん、分かり易すぎる。もういっそ直接質問すればいいのに、素直じゃない。

「一緒のクラスになれたよ」

「おう……」

 葛藤が垣間見える。誰と、と聞きたいのだろう。仕方なしに付け加える。

「ミカちゃんと。カッコーとは別だったけど」

「……カッコー?」

「前に公園で会ったでしょ。河口光夏かわぐちこうかでカッコー」

「おお、別だったか!」

 まるで聞いちゃいない。というか喜びを露わにするな。

「もう。友だちの名前くらい憶えてよ」

 ぴたりと父の動きが止まる。

「友だちだよな? あくまで友だち、なんだよな?」

「……うん」

 いやだから喜ぶな。なぜだかもやもやしつつ、私は足早に部屋へ向かった。

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