その80、空と君との間には(9)

 牧野が、俺を見ている。

 肩で息をして、でもまっすぐに。

 直前まで考えていたプランはきれいに消し飛んだ。①記憶喪失を装う、②仮病を使う――馬鹿か、俺。

 一瞬、困ったような顔をした後、彼女は言った。

「ごめん」

 息が止まった。牧野が謝っている。けんかを吹っかけたのはこっちなのに。 

「カッコーが落ち込んだの、よく分かる。私だってミカちゃんと別のクラスになったら、そうなるから」

 違う、そういうことじゃなくって……いや、そういうことでもあるんだけど。

「なのに余計なこと言っちゃって……ごめん」

 あー、もう。こうなったら行ってしまえ。言ってしまえ!

 腹を括り、口を開く。

「す、好、……こっちこそごめん」

 ……やっぱり馬鹿だ、俺。

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