その79、空と君との間には(8)

 ――何で、追いかけてるんだろ。

 前を駆ける少年の背中を見つめる。

 逃げるなら放っておけば――そう思いつつも、けれど心は新学期の教室のように落ち着かないでいた。

 それに、何で――ふいに、思い当たる。

 何でカッコーは私を見て逃げるんだろう? もしかして嫌われた? ぴりり、と胸に痛みが走った。

「ああ、もう!」

 嫌われたからってどうだというのか。

 それでも、足は止まらなかった。流れる町並が速度を増す。足の速さは父譲りだ。とりあえず今だけは父に感謝しておく。

 拝殿前で、背を丸めるカッコーに追いついた。けれど、すぐには声を掛けられない。私の体力も限界だった。

「カッコー」

 ようやく口にした呼び掛けに、ややあって彼は振り返った。

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