その43、チョコを贈ろう(6)

 チャイムの音に玄関を開ける。

 もう牧野の姿はなかった。ポストからリボンのついた包みを取り、素早く家に戻る。慌てたせいでぶつけた足の小指が痛い。

 ――というか、別に隠す必要なくね? 悪いことしてるわけじゃないんだし。

 涙をにじませ包みを眺めていると、唐突に玄関扉が開いた。

光夏こうか、何やってんの?」

 姉が帰って来たのだ。

「な、何でもない」

 上擦った声を返し自分の部屋へ逃げ込むと、机に突っ伏した。

 なぜ隠したし。

 もやもや気分で包みを開く。中には小箱と便箋。

『カラカル情報サンキュー』

 ……そういうことか。がっかりしたような、けれどどこかほっとしたような。

 小箱を開け、ひとつ頬張る。イチゴの形をしたそれは、とても甘かった。

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