その44、通学路

「おはよう」

「おはようございます」

 笑顔のおじさんにあいさつを返す。 

 節分以降、通学路にやたらとおじさんを見かけるようになった。まさかこれも秘密結社――などと考えてしまうのは、きっと頭が毒されているのだろう。

 と、見知らぬ男と目が合った。若い顔立ちに見事な丸刈りが目を引く。

 男は駆け寄ってくると、5メートル先で立ち止まり、

「本当に申し訳ありませんでした!」

 土下座した。

 え、なにこれ。

「あ、あの」

 どうしようと辺りを見回すと、おじさんたちが男を見てうんうんと頷いている。中には涙を流す者も。いや、本当になんなん? 

 男は立ち上がると、一礼して走り去った。その後ろ姿を呆然と見送る。

 まあ、うん……暖かくなってきたし。

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