その77、空と君との間には(6)

 新学期初日は午前で授業が終わる。そのせいか、カッコーに謝る機会は訪れなかった。

 ――まあ、明日もあるし。

 ミカちゃんと話しながら、昇降口を出る。

「あ」

 なんだかデジャヴな声が上がった。目を向けると、やはりカッコーの姿。唐突に立ち止まったのだろう、横でいつも一緒の男子二人が怪訝な表情をしている。

「カッコー」

 私が靴先を向けるのと、彼があさっての方角を指差したのは同時だった。

「あ! オオセスジイトトンボが飛んでる!」

「え!」

「どこ! どこに!?」

 二人が途端に騒ぎ出す。そんな彼らを置いて、声の主は一目散に校門へと走り出した。

 オオセスジ……何? ううん、そんなことよりも――

 突き動かされるように、私も駆け出していた。

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